パネルディスカッション
「砂漠の奇跡」を求めて−砂漠を駆け巡る恐竜ハンターたち
●パネリスト
長谷川善和さん(群馬県立自然史博物館 館長)
タイラー・ライソンさん(マーマス研究財団 代表)
ジョン・ホーガンソンさん(ノースダコタ地質調査所 博士)
徐星さん(中国科学院古脊椎動物古人類研究所 教授)
ケネス・カーペンターさん(デンバー自然科学博物館 博士)
マット・ラマンナさん(カーネギー自然史博物館 博士) ●司会進行
真鍋 真さん
(国立科学博物館 地学研究部 生命進化史研究グループ研究主幹)
長谷川善和館長のミステリーフォッシル その1「脊椎骨」
真鍋:私がなぜこの壇上にいるのか、自分でもよくわからないのですが、10年ほど前、ヘルクリーク層を歩いてまわり、彼が骨の案内をした、そんな縁ででしょう。私もラッキーな発見などを聞くことができ、嬉しかったです。
ステージの中に、布をかけたものがありますが、長谷川先生、これは何でしょうか?
長谷川:この檀上にある化石は、私が昨年ツーソンのミネラルショーに行った時買ってきた、モロッコ産の化石です。恐竜だ、背骨だとわかるが、それ以上私にはわからない。この恐竜展に出展したいが、私には鑑定できない。この化石は、一体どのような恐竜のものだとみなさんは思いますか?
真鍋:皆さん、コメントなどいかがでしょうか。実際にそこまで行って見ていいですよ。
(このあと、真鍋先生は椎体の状態を簡単に説明。)
ラマンナ:これは、明らかに竜脚類の脊椎骨だと思います。このように、脊椎が横に長いのは、竜脚類の特徴だからです。おそらく、胴椎の前側から真ん中の部分ではないでしょうか。ティタノサウルス類ではないでしょうか。
カーペンター:私は少しだけ違う意見です。脊椎骨であることに間違いはないのですが、横の部分を見ると、ろっ骨のくっついていたような跡があります。これは、首の根元のあたりの骨だったのではないでしょうか。
徐星:私もカーペンター博士と同意見です。おそらく、これは竜脚類の頸椎と胴椎の間の骨だったのではないかと思います。
ライソン:解剖学的な部分については、私が付け足すことはありません。ただ、この化石の表面を見ると、荒い砂が付着しているのが分かります。おそらく、この化石のあった所は、水の早く流れる場所であったのではないでしょうか。
ホーガソン:私は竜脚類の専門家ではないので、他の人と同意見とし言えません。あまり竜脚類の化石は見たことがないので、解剖学的な部分についてはアドバイスすることはできません。ただ、この化石は業者から買ったものであるので、詳しい産出状況が分かりませんね。それが少し残念です。
ラマンナ:白亜紀後期アフリカにいた竜脚類は、今のところ2種しか知られていません。ひとつは、ストローマーの見つけたエジプトサウルス、そして、私の見つけたパラリティタンです。これが本当にモロッコから見つかった知られていないティタノサウルス類だとすると、すごく大きな発見になります。とても貴重な標本だと思います。
長谷川:まあまあ悪くないものとわかりました。ラマンナ博士、この化石を研究したいですか?
ラマンナ:本当にアフリカで発見されたのなら、ぜひ研究したいです。
長谷川:それではラマンナ博士、ぜひこの化石について研究してみて下さい。個人の持ち物だと標本番号がつかないので、いずれ追ってもう少しきれいにして博物館に寄贈をしましょう。
(この脊椎骨は、シンポジウム後、スピノサウルス亜成体骨格標本の隣に展示されているはずです)
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向かって左から真鍋真、長谷川善和、徐星の各パネラー
青い布の下に、ミステリーフォッシルが…
左から、タイラー・ライソン、ケネス・カーペンター、マット・ラマンナの各パネラー
皆、化石の周囲に集まり、その特徴を見る
この写真は斜め位置から撮影しているので、実際よりかなり寸詰まりです。
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