■SVP2002年度総会レポ−ト

diplocaulusCotylorhynchus
ディプロカウルス(左)とコティロリンクス(右)

 ここの展示は、サウロファガナクスがアパトサウルスの左側面
から追いすがり、襲いかかろうとしているシ−ンを再現している。
残念ながら、サウロファガナクスの重要な特徴とされる棘突起の
付け根の稜はどの位置からも見えないが、この展示コ−ナ−は
2階からも見下ろせるようになっていて、アパトサウルスの背中
から首筋にかけての骨の形態が非常によくわかる。アパトを上か
らこれだけじっくり眺められる場所は他に知らない。

 アパトサウルスとサウロファガナクスの周囲をぐるりと1周し、さっ
きの海のジオラマの所へ戻ると、その後ろにまだ展示は続いてい
る。こちらは三畳紀以前、すなわちご当地の有名化石のコ−ナ−
である。壁にはめこんだガラスの向こうには、古恐竜類るいは恐
竜形類の代表として、エオラプトルとマラスクスの全身組み立て骨
格。どっちも、クリ−ニングを終えたばかりの純骨のテクスチュアを
そのまま再現したリアルな出来である。

かつてラゴスクスの名で知られていたマラスクスを立体で復元した
骨格は、最近ではぼちぼち展示する博物館も出てきたようだが、
筆者は実物を見るのは初めてだ。デジカメをマクロに切り換えると、
長さ3、4センチしかない骨盤部分も画面一杯までアップにできる。

 続いて、トリネロラキス、ディプロカウルス、エリオプスなど、この付
近で多産するペルム紀の両生類の組み立て骨格。そして、これが
出なければ始まらないオクラホマ名物、盤竜類の数々。ディメトロド
ンやエダフォサウルスはもういろんなところ飽きるほど見ているが、
ちょっと感激したのは、コティロリンクスの組み立て骨格が、周囲に
低い手すりを巡らせただけの状態で床の上にでんと置かれていた
こと。例の、極端に太い、それこそ上から見たらたらい型の胴体に、
これまた異様にアンバランスな握り拳大の頭骨がくっついたあの
姿は、まったく何度見ても強烈なインパクトを受ける。

センス・オブ・ワンダ−とはまさにこの事かと、つくづく関心しながら
骨格を眺めていると、そこへスペイン語をしゃべるカップルがやって
きて、骨格を指さしながらしきりに何か議論している。おや、通っぽ
い鑑賞の仕方だな、とよく見ると、胸にSVPの名札が付いている。
ああ、やっぱり同業か、と納得すると、向こうもこっちに気づいてにっ
こり笑いかけてきた。

「ハイ。私たち、今こいつの頭がものすごく小さいねって話し合って
たのよ。なんでかしらね?」
「わしもそうおもてたあるよ。でもこれって、かれらががいおんせい
のど−ぶつだったじゅ−よ−なしょうこおもうね。くちち−さいたべ
るすくないたいおんいじできないよ」
「確かにね。ほんとに変な生き物」
 てなことを話し合いつつ、こんな奇っ怪な連中がそこらをのそのそ
這い回っていたペルム紀前期のオクラホマの情景にしばし思いを
はせる。

 一通り展示を見て回り、帰りにタクシ−を呼んでもらおうとミュ−ジ
アム・ショップに立ち寄ると、店番のお兄さんがこちらの胸の名札に
目を留め、明日のオ−クションには参加するのかと尋ねてきた。SVP
恒例のお祭り、募金オ−クションは明日の夜、ここで開かれる。もち
ろんそのつもりだと答えると、「では、よい収穫を」と握手してくれた。
いやがおうでも張り切らざるを得ない。

サウロファガナクスとアパトサウルス

marasuchus
マラスクス
eoraptor
エオラプトル
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