■SVP2002年度総会レポ−ト

サム・ノーブル博物館
SVP2002ホストとなったサム・ノーブル博物館

 ま−それにしても、こんな密度の濃い講演が1人15分の持ち時間
で、途中でブレ−クをはさみつつも朝から晩までみっちり続くのだから、
聞く方にもずいぶん気力と体力が要求される。講演内容に興味のな
い時は、さっさと外へ出てディ−ラ−ズ・ル−ムでもぶらぶらするなり
してガス抜きをしないと、まず身がもたない。

もっとも、そのディ−ラ−ズ・ルームにしても、でっかい体育館の中に
ポスタ−・セッションのスペ−スをはじめ、各大学・学会の出版局や古
生物専門の古本屋、古生物モデラ−の展示即売や古生物柄のTシャ
ツ屋にネクタイ屋、プレパレ−ションの小道具や素材を売る店、それ
にもちろん標本屋などのブ−スがびっしりと軒を並べ、さながら古生物
オタクのコミケかワンフェスである。

ただ、あれより対象が局限されているだけだ。だから、モデラ−の店先
に飾ってあるのも、恐竜ではなく水底から鼻先を水面に出して呼吸し
ているチャンプソサウルスだったりするが。ここへ来てほっと息を抜け
る奴は、もうそれだけで立派な病気持ちと言える。

 しかし、ディ−ラ−ズ・ル−ムを覗くのは、講演を聞くことそれ自体に
勝るとも劣らないSVPの楽しみの1つである。文献を買いたければここ
に限る。バ−グマンやポ−ル・グリティスをはじめ、この手の学会には
かならず店を出す大手古書店が今年もとっておきの品を揃えて、手ぐ
すね引いて待ち構えている。

毎年それ専用の予算を組んでは行くのだが、それでも1000ドルあれば
1000ドル、2000ドルあれば2000ドルがあっという間に消えていく。何を
買うべきか、限られた予算内でのやりくりには本当に(楽しい)苦労をす
る。

 今回も、バ−グマンの店で、ホルツマ−デンから出たプレシオサウル
ス・ギレルミ−インペラトリスのモノグラフの美品と、モンテ・サン・ジョル
ジオのセレシオサウルスのモノグラフの、これも新品同様のものを見つ
けてしまった。どっちもドイツ語で、そうかんたんに歯の立つ代物ではな
いが、図版が目もくらむほど素晴らしい。でもどっちも120 ドルか。う−む。

 悩んでいる間にも、グレゴリ−・ポ−ルやジム・カ−クランドやトレイシ−・
フォ−ドなど、よく知っている顔がつぎつぎに棚に手を伸ばし、本をあさっ
ては目ぼしい物を抜いていく。すぐ横手では、科博の富田先生がバ−グ
マンを相手に何やら鋭い駆け引きの最中である。これはあせる。今この
本を手放したら、後ろで目を光らせているハゲタカどもが一瞬にしてかっ
さらっていくかもしれない。エサ箱の前のジャズマニアとまったく同じ心境
である。あ−金の無いのがうらめしい。

 断腸の思いでえいやっとプレシオサウルスを手放し、やっとの思いでセ
レシオサウルスをゲット。でも、最終日に見たらプレシオはまだ棚に残っ
ていた。来年まで売れ残っていてくれればいいが。それとも、余裕ができ
しだい通販で買うか。いや、余裕なんて言ってる間はぜったいに買えや
しないことは明白なのだが。

 でも、予算がなければ無いなりに、ここはいくらでも楽しみようがある。
バラの別刷りの箱をかきまわしていれば、出るわ出るわ、古い昔の論文
が、安いものは1ドル50から漁り放題である。1時間や2時間はあっとい
う間にたってしまう。それに大学や学術出版社の新刊コ−ナ−も見逃せ
ない。上手くすると、出たばかりの新刊が3〜4割引きで買えたりする。

日本から持ってきたゆうパックの大箱がたちまち満杯になる。しかし、会
期の終わりには、いつも会場内に郵便局の出店が出るから、発送の心
配はない。おまけに本には税金がかからない。今年も1箱荷造りを終え
て送りだした時には、何とも言えない収穫の喜びが腹の底からこみあげ
てきた。いや−、やっぱSVPはこれだからやめられん。

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