■SVP2002年度総会レポ−ト

サム・ノーブル博物館
SVP2002ホストとなったサム・ノーブル博物館

 最近では、SVPにも分子系統樹や同位体分析をやってる人の発
表が増えてきたが、今年は酸素18の存在比から恐竜の生理特性や
古環境の評価を試みる研究について2、3報告があった。

カスリ−ン・ト−マスらは、現生のミシシッピワニとエドモントサウルス
の歯のエナメル質に含まれる酸素18のデ−タを大量に集め、比較検
討した結果、歯の同位体比は環境要因に直接影響を受けるもので、
動物の生理特性、つまり恒温動物であるか変温動物であるかといっ
たことにはほとんど関係ない、という結論を導き出した。

 また、マ−ク・グッドウィンも、モンタナのジュディス・リバ−累層、ベ
アポウ累層、カリフォルニアのモレノ累層(海生堆積層)などから発見
されたブラキロフォサウルスの化石に含まれる、燐酸塩化合物の中
の酸素18の存在比を調べ、その数値の違いはおもに埋蔵環境の違
いによるもので、恐竜の生理特性を反映したものではないと発表した。

 まあ、このジャンルも古生物学の世界に導入されてからまだごく日
が浅く、のメソッドがどこまで役に立つのか、まだまだ今後の研究に
待つより他はないだろうが、それでも、この新しいメソッドが急速に成
熟しつつあり、多くの若手研究者を引きつけるジャンルとなりつつある
ことは確かなようだ。

今回の総会で新しく知り合った、日本の某国立大学の院生の方は、
自分がさんざん苦労してようやく11の化石の同位体比のデ−タを集
めたと思ったら、こっちでは平然と800 とか1000とかのデ−タで統計
を取っている、と頭を抱えておられた。日本の大学では学部の中に
質量分析機すらなく、他の学部に頭を下げて使わせてもらっている
というのに、こっちの研究者はみんな自前の装置を持っている。だい
たい彼らはこの研究で自分は一生食っていくんだと皆本気で考えて
いる。そのへんの心構えがまったく違う、とつくづく感じたそうである。
さもありなん、と言うより他言葉もない。

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