ホームへ

前のページ

授乳中のキノドンの母親キノドン類

 キノドン類は、古生代のペルム紀末に姿を現し、三畳紀に発展した大グループです。彼らは今哺乳類の特徴とされているものをいくつも獲得していたのです。
 この中にトリティロドンも入ります。ですから、このグループは白亜紀前期まで続いたことになります。
 これまでの哺乳類型爬虫類は、歩行姿勢などまだ、トカゲらしい域をでていなかったのに対し、キノドン類は、より哺乳類に近づいた歩行姿勢を持ち、また肋骨も胸だけになりました。横隔膜を使った呼吸も始めたのではないかと考えられます。
 キノドン類は、さらに恒温動物化していき、毛皮もまとうように
なったと考えられています。ちょっと見た目には、哺乳類とどこが違うかわからないかもしれません。


トリティロドン

 トリティロドンは、キノドン類から進化したと考えられます。大多数のキノドン類は三畳紀末の大絶滅で姿を消してしまいます。
この絶滅の原因については、よくわかっていません。が、結果として恐竜が日和見的に勢力をのばし、中生代の恐竜大王朝の
幕が開いたのです。
 その中で、哺乳類とトリティロドン科のキノドンだけがジュラ紀にその生命をつないだのです。ここで、トリティロドン科として紹介
しましたが、この科はコープにより1884年に設定されたようです。その中にビエノテリウム、ステレオグナトゥスなどがあります。

ビエノトロイデス頭蓋(横から) 右の図は、中国四川省自貢大山舗で1984年に発見されたトリティロドン(Benotheroides zigongensis sp. nov.)の頭蓋右側面です。保存部分長76mmと記載されています。(出典:古脊椎動物学報第24巻第3
号 1986年7月)

この報告の1頁のみ

トリティロドンは、その名のとおり上顎には3列になった歯があり(トリは3、ォドンは歯ですね)、下顎にはそれに対応した2列の歯があります。今回白峰で発見されたのは下顎の歯のようですね。




ビエノテリウム頭蓋下側から上顎と歯を見る右の図はこの化石の上顎を下方向から見たものです。歯が3列に並んでいるのがはっきりわかります。
この歯でシダなどを食べていたのでしょうか。

 「恐竜学最前線」第7弾の「自貢恐竜博物館を訪ねて」というレポート(94年8月)で、金子隆一氏は
「場違いのように思える、という点では、もう1つ気になるのが、哺乳類型爬虫類の存在である。
 ここからは、これまでに、2種類のキノドンの仲間、Polistodon chuannanensis(川南多歯獣)およびBienotheroides zigongensis(自貢似下獣)の頭骨が発見されている。よその土地では、この仲間は後期三畳紀にすっかり死に絶え、本物の哺乳類がとっくにその立場を引き継いでいたはずだが、ここではどういうわけか、時代の大きな節目をキノドンたちは乗り越えることに成功したらしい。1992年には、カナダのアルバータで、新生代暁新生の地層から、哺乳類型爬虫類のものと思われる顎骨の断片が発見され、クロノペラテスという学名まで与えられたが、その後この化石については疑問視する声が高まり、結局確かなところとしては、今なおこの自貢の動物が最後の哺乳類型爬虫類ということになっている。」と、報告しています。
 白峰で発見されたトリティロドンは白亜紀前期とされています。なぜそこまで生き延びられたのか、古生物学会でどのような報告がされるのか楽しみです。

'98年1月31日の日本古生物学会における瀬戸口教授の報告では、以下のようなことがわかりました(非常な早口だったので聞き漏らした部分も多いです)。予稿
 発掘現場は、桑島化石壁のトンネル工事部分から(化石壁自体が掘削できないため、ダムとの連絡用に新たに山側にトンネルを掘った、その掘った土砂の中から発見)。千葉県博の伊佐治氏や、共同発表者の松岡氏(京都大・理)が発見、中国の王ゲン(字不明)さんも居合わせた。王さんの手引きで中国のトリティロドンを雲南に確認しに行った。
 雲南のルーフェン(禄豊)フォーメーション(ジュラ紀)で発見されたというトリティロドンと比較した。結果は、ビエノテロイデス(上の図)と形態はほとんど同じだが、ビエノテリウムとは違う。種まで同一かどうかは、今後検討する。
 新聞報道では、発見された歯は6個となっているが、現在までに14個発見されている。大型の歯、小型の歯、上顎の歯列もある。これを見ると、白峰のトリティロドンは2種だったのかもしれない。歯の交換は、ゾウのように水平交換だった。顎関節は、爬虫類の関節だった。
質問1:歯の比較は、中国以外産出の化石としたか?→見ていない。また、論文では頭蓋について記載はあっても歯については記載がはっきりしないものが多い。実際に現物を見るしかない。これから全世界の現物を見るつもり。
質問2:中国四川省、新彊で発掘されたトリティロドンの共産化石は?
→自貢でも他の化石と違うフォーメーションから産出している。むしろ、ビエノトロイデスを指標として時代を決めている。
 スライドは30枚ほど使用していました。中に、マメジカの歯列のスライドも1枚ありました。