中足骨に長い羽毛がある、中国産マニラプトラ類恐竜 2.06.05
A new maniraptoran dinosaur from China with long feathers
on the metatarsus
Xing Xu(徐星) and Fucheng Zhang(張福成)
Naturwissenschaften DOI:10.1007/s00114-004-0604-y
2002年、中国内蒙古自治区赤峰市寧城地区道虎溝(Daohugou)村近郊の道虎溝単層
から産出し、スラブ両側に保存された、推定体長1m未満の小型獣脚類の右脚から
足部化石の記載です。
道虎溝層の年代は、中期または後期ジュラ紀とされています。道虎溝からは、樹
上性コエルロサウルス類Epidendrosaurus も産出しています。
これだけなら、何の変哲もありませんが、そのスラブには脚に沿い、長い正羽が
認められるのです。これまで脚に正羽が生えた恐竜は、Microraptor gui など基
盤的ドロマエオサウルス科で報告されています。これは鳥類の起源において、樹
上から滑空仮説を強力に支持する証拠とされてきました。しかし、これはドロマ
エオサウルス科に特有の形質かもしれない、ゆえに獣脚類-鳥類の移行と無関係か
もしれないと考えられました。
ここで、この化石は、ドロマエオサウルス科でない、同科も含まれるエウマニラ
プトラ類であり、また、ジュラ紀中-後期の地層から産出しています。
Archaeopteryx に次いでジュラ紀で鳥類と恐竜の系統関係を示す正羽を保存した
標本なのです。
長い正羽はエウマニラプトラ類にとって獣脚類-鳥類の移行に近い原始的な適応を
示す形質かもしれない。長い中足骨の羽毛はエウマニラプトラにとって原始的と
なりそうであり、鳥類の飛行の起源において重要な役割を果たしたかもしれない
としています。
この標本(IVPP V12721)は、Pedopenna daohugouensis gen. et sp. nov.と命名さ
れています。属名は脚の長い正羽から。種小名は産地名から。
分類基準として、非常に細長い第一趾第一趾節(骨長/中位軸径比は約7.2)、ドロマ
エオサウルス科およびトロオドン科とは特殊化していない第二趾および第二趾第二
趾節は第二趾第一趾節より長い点が異なり、ドロマエオサウルス科とは短い第五中
足骨および第四中足骨に後内側縁を欠く点が異なり、Epidendrosaurus(本論文での
クラドグラムでは鳥類に含まれています)を含む鳥類とは第一趾が反転していない
ことおよび趾部の長さが中足骨より短い点が異なるとしています。
正羽については、次のように述べています。外皮構造は脛骨および中足骨近くに保
存され、脛骨近くの外皮構造は明らかに枝分かれし、羽軸と羽枝の存在を示してい
る。中足骨に付いたそれらは正羽であるように見える;かたい羽軸と並列した羽枝
により形成された小羽がある。中足骨の羽の長さは総じて45mm程度で遠位の羽の方
がわずかに長いが55mm未満である。その正確な本数は保存状態により知ることはで
きないが、Microraptor gui よりは数多い。それらは羽軸に表されるように、爪先
方向に僅かにカーブしている。完全な一つの羽毛を分離することは不可能だが、中
足骨の羽毛はほとんど対称羽であるように見え、それはMicroraptor gui のものよ
り比例して幅が狭い。中足骨近くには、より厚い印象で表される短い羽毛があるが
覆羽に類似している。
議論では、その足の特徴からPedopenna daohugouensisは既知の獣脚類の中で鳥類
と最も近縁であるとしています。脚の長い正羽は基盤的エウマニラプトラ類で普通
な適応だったのかもしれないとしています。Pedopenna の正羽は基盤的ドロマエオ
サウルス類のものより堅くなく、空力特性はあったとしてもM.guiよりはるかに劣
るものだったろうとのことです。ここから脚の正羽の機能は、捕食者からの保護、
保温、装飾など考えられるが、基盤的エウマニラプトラ類が脚に長い非対称羽を
持っていて飛行や滑空の機能をしていたのが、鳥類は進化の過程で前肢翼を強化し
後肢翼は退縮していった。Pedopenna はそんな段階で中足骨の羽は飛ぶ機能を退縮
させつつの翼の組織は残していたのかもしれないとしています。
読売新聞 中国恐竜網