金子隆一と行くアメリカ恐竜ツアー2003
11 ブリガムヤング大学地球科学博物館

 8月22日 今日は朝9時発のゆったり。ヴァーナルからプロボに向け約4時間の移動。天気は快晴。もっとも午後ユタでは雷雨がある予報。

ワイオミングからユタに入ると少し緑が豊かだ。 山地は標高2000m以上になると松や白樺に似たアスペンが森を作っている。所々ダム湖などがあり、リゾート地になっている。日本のように土産物屋やはでな放送はないので本当にゆっくり過ごせるだろう。

 プロボへはもう一山越える。ブリガムヤング大学博物館に行く前に昼食。4年前の金子氏の記憶により、うまかったというスパゲティ屋を探しプロボをぐるぐる廻る。が、出てきたスパゲティは腰がまったくない社食なみのもの。金子氏推薦でもはずれることはあるものだ。

 館長ケネス・スタッドマン氏が出迎え、早速バックヤードへ。残念ながらバックヤードの標本はネットにアップすることはできない。あしからず。

 まず見たのはティタノサウルス類の頭の一部の化石。ナショナルモニュメントエリアから。建物で覆っているところはジュラ紀の地層だが、別の場所で白亜紀最初期から産出したものだそうだ。肢骨もある。頭と肢骨は同一個体ではないが、同属のもの。仮称モアブサウルスとされている。

さらに歯が出土している。これがカマラサウルス系の歯をしている。スタッドマン氏は、カマラサウルスが南に渡ってティタノサウルス類の祖先になったのではないかという仮説を立てているそうだ。この化石はこれから先ティタノサウルス類のなぞを解くカギとなるかもしれない。仮称モアブサウルスはおそらくJVPに記載論文が発表されることになるだろうとのこと。

 さらに奥にいく。棚いっぱいの化石。これはすごい。大腿骨だけで何本あるのだろう。 スタッドマン氏はまずユタラプトルを見せてくれた。非常によく保存された脊椎骨。これから推定すると体高 約3m体長約5m程度だそうだ。ほかに前顎骨や足の末節骨などひきだしにいっぱい入っている。何体ユタラプトルの化石が出ているのか質問が出た。ほぼ同じ大きさの脛骨が2本また亜成体の大腿骨も1本ある。ゆえに少なくとも3個体との答え。 これらはユタ州南東部から。

 また、ティタノサウルス類の頭骨が1個あった。歯をさきほどのモアブサウルスと比較するとティタノサウルス類の起源がわかるだろうとのこと。

 棚から細長い骨を出すと、下に置いてある骨盤につなげた。これはケラトサウルスの骨盤。スミソニアン博物館に展示してあるタイプ標本のピュービックブーツは作り物で大きく広がっているが、これはほとんどまっすぐ。こちらが本物とのこと。

仙椎には刺突起を強化する骨化した腱が見える。このケラトサウルスについては今年のSVP総会で発表するそうだ。

そのほかスーパーサウルスの尺骨、ディプロドクスの足(踵骨は無い。竜脚類では直接中足骨につながったのではいか)。 トルボサウルス 模式標本の上腕骨と前肢、トルボサウルス前顎骨(歯槽が3本)。

ディプロドクスの骨たくさん。ドライメサで支配的だったのはディプロドクスだったようだ。ハプロカントサウルスはきわめて珍しいが、脊椎の3個つながったものがある。

  突然屋根をたたく雨音。雷雨だ。風も激しい。 ドライメサのワニ。おそらく新種。鉄砲水に流される池に元々ワニとカメは住んでいたが鉄砲水にほかの生き物と泥水が流れ込み、一緒に埋められたもの。

ステゴサウルスの肋骨ほか、中にはがんに侵されたのか、変性した骨のかたまりもある。また、肉食恐竜にかじられた跡のある肋骨もある。脳の収まる部分も見たが、なるほど小さい。

 常設展示に戻る。まだ氏の説明は続くが、金子氏とヒルさんのほかはろくに聞いていない。 雨もやみ、金子氏の希望でスタジアム下のジャケット群を見に行く。なるほど巨大なジャケットがごろごろ積まれている。それでも数年前に比べるとずいぶん整理されているそうだ。このスタジアムは改修予定で、いずれ別の倉庫に移される。スタッドマン氏はスタンドから落ちる雨水がかからないうよう、ジャケットにビニールシートを広げた。

ブリガムヤング大学地球科学博物館正面


ケネス・スタッドマン氏と金子隆一氏


デイノスクス


エダフォサウルス


トルヴォサウルス

スタジアム下のジャケット群