博物館訪問記

名古屋市 東山動植物園開園60周年 記念事業”こんにちは!恐竜家族”

恐竜の友の案内に惹かれて名古屋に行って来ました。以下 報告を。
 名古屋駅から地下鉄東山線でおよそ20分、東山公園駅の 目の前に東山動植物園はあります。開園60周年記念事業 ということで、入場料は大人(高校生以上)900円、子供 300円(中学生以下)です。期間は平成9年3月20日〜 6月1日。開園は9:00〜16:30 といったところで基礎データはおしまい。

 園内では記念事業がいろいろあります。”こんにちは! 恐竜家族”は、その一つとして中日新聞社の企画で行われて います。雨の中、桜が花びらを落としています。フラミンゴ の池には何とも古典的なトリケラトプス。種類もさだかでな い恐竜と向き合っています。

 会場前には卵から孵化したばかりのプロトケラトプスの石 像。中日新聞社の寄贈です。会場自体はテント張りで、期間 中だけの施設とわかります。

 中の展示は、現生動物の卵などから始まります。あいさつ のパネルは、董 枝明、バースボルド、東 洋一の三氏揃い 踏み。通路の右側には恐竜卵が幾つか。ルーペをセットして (柄が曲がっていてよく見えなかったが)未研究の恐竜胎児 。左側にはイグアノドンの足跡(白亜紀後期、 '96 遼寧省阜新市との説明あり)。 おっと、右側の「恐竜と同時代の生き物」のコーナーには こ・孔子鳥がいるではないですか!私は帰りに気づきました。 あぶないところだった・・・ホント、さりげなくケースに陳 列してありますので、注意してください。


左、未研究の胎児  右:孔子鳥(confucirsornis)

このほかに孔子鳥の写真は 頭部胸部82k腕部65k腰〜脚部100k があります。



左:フアヤンゴサウルス、右:オメイサウルス

 天井の高い内部には、恐竜の骨格二体。フアヤンゴサウル スとオメイサウルスです。天井はひとえにオメイサウルスの 長い首のためです。雨が強くなると、テントの屋根が小太鼓 の連打のように響きます。

左:世界最大の恐竜の卵の巣、右:同種類の卵

 床に特設して”世界最大の恐竜の卵の巣”の展示。2m四 方位でしょうか。ちょっと見の印象は、平たいクレーターに 細長い石が放射状に並んでいる、というものです。私の印象 では卵の長径は50cm、短径12cm くらいですが、説明には70cmと書い てあります。白亜紀後期のもので、'95年に中国河南省南陽市 西峡県で発掘。学名はMacroelonogatoolithus xixiaensis
種名は西峡だとわかりますが、属名は何のことやら。
細長い卵は何が産んだのだろう。丸くないから竜脚類 ではあるまい。巣の径が大きいから、かなり大きな恐竜 だったと推定できる。解説では、肉食恐竜の可能性を言及 している。この先、卵の中が明らかにされるのを待とう。

左:恐竜卵(竜脚類?)右:クリーニング風景

 周囲の壁際には、いくつもの恐竜卵が展示されている。産地 は、河南省南陽市西峡県、同内郷県。時代はいずれも白亜紀 後期。一つ一つ大きさも種類も違う。解説によれば、当地の 農民は1920年代から恐竜卵の存在を知っていたが、何かは 解らず「石蛋蛋」と呼んで、植え込みの境界の飾り石などに していたそうだ。その後、1970年代に中国古脊椎動物古人類 研究所の研究者によって恐竜卵と確認され、1994年頃には発掘 個数は5,000個を超えると言われていたそうだ。
 ただ、しろうとが見ると、卵はあくまでタマゴだから、中身 が見えなければただの大きなタマゴでしかない。足跡のように タマゴで種分類や恐竜の生活がわかればいいのだが・・・
 とはいえ、卵の中身がわかると、こんな素晴らしい例がある。 オヴィラプトルの胎児だ。よく知られているように、オヴィラ プトルは”卵泥棒”という不名誉な名を付けられている。が、 実際は子育てに熱心な恐竜だった。暖められている中途で砂に 埋もれてしまったのだろうか。骨の集積は細かく、肉眼ではなか なか骨の種類がわからない。 説明写真が別にあるので、ようやく 種類が判明する。


左:オヴィラプトルの胎児 oviraptor embryo
右:(参考)割れていないオヴィラプトルの卵

卵を抱えるオヴィラプトル
オヴィラプトルの頭骨
参考: ウランバートル自然史博物館のオヴィラプトル
参考:同オヴィラプトルの頭骨正面
参考:同博物館オヴィラプトル頭骨
参考: 群馬県立自然史博物館のオヴィラプトル?(博物館の表示では?インゲニア)
参考:巣で抱卵したオヴィラプトルの化石



 横には、抱卵するオヴィラプトル。再現すると、こんなに 大きかったかと驚かされる。その脇には林原の発掘した卵。


白亜紀、1994年モンゴル東ゴビ県 アルグイ・ウラン・ツァフにて発掘。
竜脚類と推定される。 (巣を下から見たところ)


白亜紀後期、1993年モンゴル東ゴビ県テル・ウラン・チャルツァイ にて発掘。
獣脚類と推定される。 (巣を下から見たところ)

最後の見物は、プロトケラトプスの幼体15体の群。皆、同じ 方向(発掘時は東)を向いている。もし、これが巣で死んだ ものであれば(展示の解説ではそう示唆している)、プロトケ ラトプスは、子育てをしていた事になる。マイアサウラやム スサウルスだけでないとすれば、子育ては恐竜にかなり一般 的な行動だったのかも知れない。


プロトケラトプスの幼体15体
部分拡大写真はここをクリック!52k
成体のプロトケラトプスはここをクリック!



ハドロサウルスの幼体


 今回展示された化石は、新しい恐竜像を与えるとともに、 新しいなぞも運んできたように感じた。また、それが恐竜 に惹かれる理由でもあるのだろう。