博物館探訪記

1.千葉県立中央博物館

 96年11月17日、好天に誘われて千葉まで遠征してきました。 恐竜足跡についての特別展 を開催中です。まず、全科協のホームページから 千葉県立中央博物館の ページに飛んで、交通案内をプリントアウト。

 千葉駅からは京成バスで15分あまり。博物館前バス停から徒歩7分くらいでしょうか 。分譲中の公団団地の脇を抜けて、青葉の森公園の一郭に博物館はあります。ここは、生 物、地学のほか、千葉の歴史についての展示もあります。通常の展示は無料ですが、今回 の特別展は300円となっています。日本の博物館は写真撮影禁止の所が多いのですが、 特別展の受付けで尋ねると、三脚でなければストロボもOKとのことでした。

 会場はさほどの広さはありませんが、前カンブリア紀の生痕化石、日本では珍しいエデ ィアカラ動物群の化石など、まず一般にはなじみの薄い展示から始まっています。私も、 このあたりはあまり知らないので、”ふーん・・・”という程度でした。一応撮影はしま したが。

 展示の3分の2を占めるのが足跡化石です。三畳紀の爬虫類の足跡から、小型恐竜、ジ ュラ紀、白亜紀それぞれの時代の主な足跡が展示されています(ナチュラルプリント、ナ チュラルキャスト両方)。一方、パネルでは、現地写真や足跡化石研究の意義などの説明 がされています。特筆すべきは説明員の存在で、1時間に1回、30分ほど説明員が展示 の説明をします。また、日曜日の午後1時30分からは学芸員による説明があります。私 は運よくこれにあたりました。伊佐治 鎮治学芸員でした。 この方は、確かカツヤマケンリュウの発見者だったと思います(うろ覚えだけど)。 子供が多いので、わかりやすく説明 していました。なかなか他の博物館ではやっていない試みですね。

 図録の解説は森田 利仁氏と松川 正樹氏です。中里村の恐竜センターにも足跡の展示がありましたが、あれと 同じと思えばいいです。値段は1,300円、500部限定です。 なかなか力が入っていてよろしい。後半は特別展の論説集となっており、A.ザイラッハー 、平野 弘道、小畠 郁生ほかの諸氏による論説が合計50ページあまり。これはお薦めです。 ミュージアムショップ では中国産のセグノサウルスの卵が売ってました。30,000円です。この値段なら買 う人は沢山いるんじゃないかな。

 外には野外生態園があります。千葉県の植生や、池に飛来する野鳥観察施設もあります 。公園内なので、家族連れで一日過ごすにはいい場所と思います。機会があったら皆さん もどうぞ。



2.群馬県立自然史博物館

注:本ページに掲載の写真は群馬県立自然史博物館の許可を得て掲載しています。

 96年12月1日、雪の降る前にと思い、行って来ました。10月22日に開館 したばかりなので、情報は殆どありません。まず、困ったのが交通の便。車の人 はいいけれど、電車利用でどう行くのかが問題。「恐竜学最前線」第13弾によ ると、上信電鉄七日市場下車というので、そのとおりに行ってみました。ちなみに 上野から高崎まで在来線で1時間半、1,850円、高崎から七日市場まで30分くらい 、760円でした。
 ところが、駅前には何もない。貼ってあった博物館のポスターを見て電話した ら、上州富岡まで戻ればレンタサイクルがあるというのです。が、その電話をしている 最中に上り電車は発車してしまった。次まで50分ある。というわけで、歩いて 戻りました。20分くらいかかった。ここで、相乗りタクシーというものがある ことが判った。しかし、時刻は11時半をまわったところで、ちょうど出たところ。 そこで、駅事務室に申し出てレンタサイクルを借りた。これはただです。
 途中、道に迷いながら、到着。これは、健脚向きです。博物館は丘というより 山の上だった。とりあえず、ここまで。あと、電車の人のための時刻表と駅から博物館までの案内 を見てください。
 写真が出来たら続けます。 ねこまたぎさん もこの日モンゴルツアーのみなさんと来ていました(偶然会った。) しかも長谷川 善和館長じきじきの説明という幸運にありついていた!だから、 あちらでもきっと報告が出るでしょう。
 まあ、私の方もぼちぼち書きますので、両方見れば参考になるでしょう。
博物館の住所は群馬県富岡市上黒岩1674−1 電話0274−60−1200  FAX0274−60−1250ですよ。
 そうそう、開館記念展の「アルゼンチンの大恐竜展」は、1997年2月2日(日)まで。 開館時間は午前9時30分から午後5時まで(入場は4時30分まで)。休館日は月曜日。 12月27日から1月5日も休み。詳しいことは電話して聞いてください。 (好評につき3月2日まで延びました)。 入場料は一般900円です。企画展は出口から出ても券があれば 再入場できます。

常設展示

 それでは常設展示から入場。まず、人間からご先祖筋を遡った生物の系譜( こういういいかげんな書き方で私のレベルが知れる)。そして、地球の誕生から 現在に至る生命史。隕石の展示から始まります。通路の左右にそれぞれ標本が あるのですが、どう見てゆくかはお好みでしょう。DNA模型やウィルソンの 霧箱。縞状鉄鉱床などいいものがあります。このあたりの展示は科博よりよほど 充実しています。以下の説明は、学芸員のI氏(ホームページに載せる了解を とっていないので仮名。また、文責は当方にあります)に伺った部分がありま す。


縞状鉄鉱床 中国産 先カンブリア時代(約27億年前)
縞状鉄鉱床 オーストラリア産 先カンブリア時代
この2つの色の差は地球に酸素が無かった頃と、酸素が出来てからの違いなのだろう。

ディメトロドン よく恐竜と間違われるが、盤竜類。哺乳類の直系の祖先にあたる。


 さて、恐竜展示だが、I氏によれば、恐竜は大きいから目立つが、他の標本 より資料的価値が優るものではない。「恐竜が充実している」と言われると、 ちょっとむっとくる、との事。どうも氏の専門は先カンブリア紀から古生代の ようだ。話がそれたが、まず驚かされるのは、ガラスの床の下にな・なんと、 トリケラトプスのボーンベッドの発掘光景が再現されている!恐々うえから 見下ろすのだが、ほんとによく出来ている。I氏によれば、展示されているの は純骨で、まだ記載されていない。そこで、休館日に取り出して論文を書かな ければならないそうだ。これから取ったキャストが、脇にある標本である。


 お次はガリミムス。ロボットと全身骨格の2体である。中里村で新種と発表 された標本と同じ物か尋ねたところ、権威であるバルスボルドがガリミムスで あるとしてモンゴルから送ってきたものだからそうだろうが、脊椎一つで判断 できるのかどうか我々にはわからない。むしろオルニトミムス類としてもいい のではないかとの思いもあるとの事だ。なお、この下に山中竜の標本もある。
サンチュウリュウ(オルニトミモサウルス類の一種)
群馬県多野郡中里村 白亜紀前期 群馬県で最初の恐竜化石。


(追記:ねこまたぎさんに、”ガリミムス・ブラトス”とプレートが出ていたと 教えてもらいました。中里村の新種はガリミムス・モンゴリエンシス。 どこが違うかは ここをクリック!戻る時は左の目次をクリック!)
(追記2:右側の模型は、ペレカニミムス・ポリオドンです。白亜紀前期。スペイン ・ラホヤ)



 ロボットは、ティラノサウルスも頑張っている。しかし、それ以上に圧倒さ れるのは、竜脚類。マメンキサウルス、ブラキオサウルスそしてカマラサウルス の3体だ。いやはや首が長くてとても写真に収まらない。なぜ、3体の展示が あるかも理由があった。I氏いわく、当初はカマラとブラキオサウルスの2本 立てで展示を構想していた。しかし、ブラキオサウルスを持っているフンボルト 大学は当時東ベルリンで社会主義国だった。複製の許可がおりないまま時が過ぎる ので、かわりにマメンキサウルスを入れることにした。そうこうするうち、 ベルリンの壁が崩壊した。国家からの補助金が絶えたフンボルト大学がやっと 複製の許可を出したので、作ることが出来た。そこで、今はアジア、アフリカ そしてアメリカ3大陸の竜脚類を展示と言っている。との事。しかも、 マメンキ実は親子連れで、子供のマメンキが組み立てられないままバックヤード に眠っているそうである。実際、組み立てても展示するスペースが無い。


左からブラキオサウルス、カマラサウルス、マメンキサウルス。
カマラサウルスの展示説明によると、「カマラサウルス・グランディス  ジュラ紀後期 アメリカ・ワイオミング州。世界唯一のメスのカマラサウルス。 恐竜として初めて3つの骨の病気(潜在性脊椎披裂、骨関節症、汎発性突発性 骨増殖症)が確認された。病名は鈴木 隆雄氏による」とあります。



 そこここにある模型は荒木一成氏作であるそうだ。

アロサウルス対カマラサウルス


デウノサウロイド。
トロオドンのような恐竜が
絶滅しないで進化したらこ
うなったのでは・・・とい
う想像の産物。

これを見て「カッパ、こわいよ!」
と、泣き出した子供がいた。
ウーム、河童って、もしかして・・・
(デウノサウロイドは著作権者が群馬県立博物館以外の使用を認めていない ため削除するよう同博物館から要請がありましたので、削除しました。)

私の興味を引いたその他 のものは、まず、始祖鳥。これは、各標本のレプリカが展示してあるとともに、 復元骨格及び復元像が展示してある。また、各肉食恐竜の歯や末節骨の比較展示 もされている。

 恐竜以外にも例えば、コロンビアマンモス(これも展示に至る裏話があった) やパレオパラドキシアなど、新生代の哺乳類も決してひけをとっていない。が、ここ では、人類を含めた霊長類展示をとりあげよう。

 最初のコーナーで、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの各比較 がされている(骨格や生態)。次にルーシーの一族からネアンデルタール、ホモ ・サピエンス・サピエンスまで人類の系譜の中で主に骨格を元に数々の比較( 例えば脳容量)がされている。

 標本数から言えば科博といい勝負かも知れない。 しかし、説明の斬新さ、展示手法の新しさにおいて、ここは今、日本の博物館で 最高水準をいっていると断言できる。ちなみにここの説明は多地域連続進化説 (人類が原人段階から世界各地で別々に進化してきたとする説)とアフリカ単一 起源説(新人段階で再度人類がアフリカから各地に広がり、原人の子孫を滅ぼ して置き換わったとする説。どちらが正しいかまだわからない。)を並列的に 説明している。先日の科博のピテカントロプス展が多地域連続進化説一方だっ たので、よけい印象的だった。

 ここのもう一つの目玉(と私は思う)は、コンピューター検索による立体人 類化石標本表示である。これはCDロムになったら結構売れるのではと、思わ れる。皆さんも是非、操作してみてください。
(追記:博物館によると、「人類コーナーの3次元検索は、Open-GL形式を用い、世界第1号の3D アクセラレーションチップを用いたシステムです。`96のNICOGRAPHに 出品して、世界的に注目を浴びました。」ということです。)
 ネアンデルタール人の埋葬のジオラマも見逃せない。このバックの色調、ど こか見覚えがと思ったら、やはりそうだった。I氏いわく、これはデンバーの アーチストを呼んでこちらで作らせたんですよ、との事。そうだ、この透明な リアルな絵は確かにデンバー博物館のものだ。手にしている花は、実際に遺跡 で発見された種類と同じタネを輸入して群馬で栽培したものを使っているそう だ。いやー、こってますねぇ。

 博物学者の部屋ではダーウィン自らが説明してくれる(もちろんロボット)。 ここには触れる標本が数多い。子供に人気が出そうだ。  そのほか、群馬の自然と環境、かけがえのない地球の各セクションも充実 している。が、駆け足だったのでろくに見ていない。というわけで紹介不能。






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