恐竜は隕石で絶滅、12か国のチームが結論 3.05.10
毎日新聞 朝日新聞 千葉工業大学 東北大学 千葉工業大プレスリリース本文(日)
テキサス大オースティン校 カリフォルニア大サンディエゴ校
約6550万年前の白亜紀末に恐竜などが大量絶滅したのは、メキシコ・ユカタン半
島に巨大な
研究機関による研究チームがまとめ、サイエンスに発表しました。
Schulte et al.(2010)
The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene
Boundary
Science 5 March 2010: Vol. 327. no. 5970, pp. 1214 - 1218
DOI: 10.1126/science.1177265 アブストラクト
1980年にルイス・アルバレヅ博士らが、この説が提唱され、さらに1991年、ユカタン半
島にチチュルブ・クレーターが発見されて以来、白亜紀末の恐竜を含む大量絶滅の原因
が、このクレーターをつくった巨大隕石の衝突によるものなのかどうか、論争が続けら
れてきました。
巨大隕石によるものでないとする説には、次の2つの説があります。
1チチュルブ・クレーター形成の年代は、白亜紀末より30万年ほど以前であり、大量絶
滅とは直接関係ない。
2大量絶滅の原因は、インドのデカン高原を形成したデカン・トラップの活動である。
これらの説に対し、千葉工業大プレスリリースでは以下のように述べています。
1世界各地(350地点)でで報告されている白亜紀末の地層にはチチュルブ衝突起源の物質
が含まれる。そして、チチュルブ・クレーターを中心として系統的な地層の薄層化や
衝突起源物質のサイズ減少が見られることから,衝突が全球に影響を及ぼしたと考え
られること。
2チチュルブ衝突と生物大量絶滅のタイミングが一致すること(今回の研究により両者
の発生時期は世界中の地層で厳密に一致していることが確認され、チチュルブ衝突は
生物大量絶滅の約30 万年前に起き,絶滅とは無関係であるという仮説には根拠が無
いことがわかりました)
3数値計算結果に基づけば,チチュルブ衝突により放出された粉塵や硫酸塩、森林火災
に伴う煤などの量や大気滞留時間は、光合成生物(植物プランクトン)の活動を長期
間停止させうること、などが挙げられます。食物連鎖の基底をなす光合成生物が死滅
したことにより、恐竜などの大型生物は食料を採取できなくなり絶滅したものと考え
られます。
4(デカントラップ活動など)火山噴火は、白亜紀末をまたぐ約100 万年の長期にわたり
活動を続けました。しかし、環境に与えた負荷は小さく、この間に生じた温度変化は
2 度未満であったことがわかっています。実際に、火山活動が最も強かった時期には
生物大量絶滅は起きていませんし,白亜紀末の生物大量絶滅時には火山活動が弱かっ
たことなどが、この仮説では説明できません。
5白亜紀末に巨大天体衝突が複数回起き、チチュルブ衝突以外の天体衝突が生物大量絶
滅の原因となったとする仮説も提唱されていました。しかし、白亜紀末を含む約1000
万年間に渡って地球外物質(イリジウム)の濃集度を高精度で調べた研究に基づくと、
この間に起きた巨大天体衝突はチチュルブ衝突のみであったと考えられます。
これで恐竜を含む大量絶滅の原因に終止符がうたれるのでしょうか。今後、反論が提出
されるのでしょうか。
なお、テキサス大ニュースから、CHICXULUB IMPACT QUICK FACTS を紹介しておきます。
1隕石は幅約10kmの大きさ。英国ではブリストル市、ワイト島、ジャージー島が同程度。
2隕石の重さは世界全人口の体重総計の約10,000倍(3×10の15乗kgまたは3×10の12乗t)
3衝突時、隕石は毎秒20kmの速さだった。これはライフル銃のおよそ10倍の速さ。
4衝突で放出されたエネルギーは、広島に投下された原爆の約10億倍。また、これまで
実験された最大の核兵器の100万倍の大きさ。
5最初に形成されたクレーターは径約100km、深さ約30km。粉塵がクリアーになった後に
なると、径約180km、深さ約2km。
6この規模の衝突は平均して1億年に1回起こる。
7衝撃による地震の規模はマグニチュード11。2010年2月27日、チリで発生した地震(同
8.8)に比べ、100倍になる。