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金曜の夕、国立科学博物館。6時が近づくにつれ、まばらだった会場内に
 人が三々五々集まりだしました。
 今日は、ギャラリートークの第1回。冨田幸光先生のお話です。

 

 4月10日のギャラリートーク、冨田先生の話は
1 なぜ、ゴンドワナの恐竜なのか
2 それぞれの恐竜の見所
この二つが大きなテーマでした。

1 なぜ、ゴンドワナの恐竜か
 まず、大陸移動から説明を始めました。大陸は1年に最大10cm、平均5cm程度移動する。わずかな移動でも1千万年、1億年たてば大きな距離になる。

 今から2億5千万年から2億7千万年前には、超大陸パンゲアがあった。しかし、1億7千万年前頃から分裂を始める。北はローラシア、南はゴンドワナ。
 皆さんがよく知っているティラノサウルスやトリケラトプスは、ローラシアの恐竜。南側には別の恐竜がいた。
 1998年に同じようなテーマで恐竜展を開催した。それは、その頃までに知られていた、ゴンドワナの有名な恐竜を紹介したものだった。しかし、それから11年たち、その間に研究は非常に進歩した。一説には、最近20年間に記載された恐竜の数は、それ以前に記載されたものの実に4倍という。

 ゴンドワナで発見された恐竜もたくさんある。そこで、あらためて目を向けてみることにした。以前は、北と南で別々に恐竜が進化したという、単純な説明で済んだが、ローラシアで発見されている恐竜の仲間がゴンドワナでも発見され、説明がつかなくなっている。

 今回の恐竜展の恐竜の主な産出地はアルゼンチン、ブラジル。アフリカの恐竜はアメリカの研究者などが研究している。今から3年前からこの恐竜展の企画をはじめ、各地の研究者に標本の貸し出しを交渉した。ただ、その頃は組み立て骨格がなく、展示された骨格の大部分は、この恐竜展のために初めて作られたもの。世界初公開も多い。


2 各恐竜の見どころ

マプサウルス
 2006年に記載された。2005年に展示されたティラノサウルス、スーのように関節した骨格ではなく(1つの個体のレプリカではなく)、300〜400のいろいろな骨がまとまって出てきた。これは、最低で7匹分の骨が混じってでてきたもの。

 研究者を悩ませたが、超大型恐竜が、単独行動でなく群れで見つかった、群れ行動の証拠となった。カナダでも別の種類の恐竜で群れ行動のものが見つかっている。

 これは、ギガノトサウルスと同じグループなので、ギガノトサウルスをモデルに使った。最大で13m、小さいものは、6m。あと5匹もそれぞれ成長段階が違うものだ。
 歯を見ると、ティラノサウルスより1〜2割小さい。また、薄い。常設展示にティラノサウルスがあるので、比べてみると皆さんもわかる。ティラノサウルスは獲物の骨ごと砕いて食べただろうが、マプサウルスは、肉だけ食べたのかもしれない。また、体全体に比べ、頭が大きい、全体に骨格が華奢だ。

 足を見ると、脛のように見える、ここは中足骨というが、前から見て3本はっきり見える。これは、原始的な肉食恐竜の特徴。ティラノサウルスでは中足骨の真ん中の骨が両側の骨に挟まれて見えなくなる。クリオロフォサウルスも2億年前の古い恐竜で、前からはっきり見える。マプサウルスは9千万年前の恐竜だが、ゴンドワナでは古いタイプが残った。



ニジェールサウルス
 ここの前の部屋に展示してあるニジェールサウルスでは、歯が横に真一文字になっている。幅3ミリの歯がずっと並んでいるが、2センチも奥に入れば、何もない。地面に生えていた植物をつまんで食べていたのだろうか、ある植物学者は、水辺の藻を食べていたのではないかという意見だった。


マシャカリサウルス
 この恐竜はティタノサウスル類と呼ばれるグループの恐竜。ティタノサウルス類はゴンドワナを代表するが、最近、ローラシアでもいろいろ発見され、なぜローラシアでも発見されるのか、研究テーマになっている。


ウネンラギア
 ガラスケースの向かって一番左にある骨格。ラプトル(ドロマエオサウルス類)の仲間。これも、北半球でなく南半球で発見されたことが問題。7000万年前に、南北アメリカが一時的につながっていたが、ウネンラギアはもっと古い時代。南北離れていたのになぜいるのか、説明を考えている状態。


翼竜
 翼竜は、空飛ぶ爬虫類。恐竜ではない。空を飛ぶので、化石には、なりにくい。世界では5箇所、北米、イギリス、中国、ドイツ。南のブラジル北東部、セアラ州で発見されている。
質問と答え
・恐竜の両足の間に突き出ている骨は何か?
 恥骨という。人間の骨盤では癒合しているが、恐竜では3つの骨が独立している。

・ウネンラギアの復元図に羽毛があるが、本当にあったのか?
羽毛のあとはないが、分岐分類により、この恐竜の祖先にあたるグループの恐竜から羽毛が見つかっている。当然、その子孫にあたグループには羽毛があっただろうと推定している。

・恐竜の走るスピードや声の大きさは?
 ある程度、足跡で推定できるが、スピードはよくわからない。声についても、鳥は小型恐竜の子孫であることが、ほぼ確実。恐竜でも耳はあったからなんらかの音はだしていただろう。

・下あごに開いている穴は何か?
  筋肉や神経が通るものだろう。