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中国ジュラ紀層から出土した長いリボン状の羽毛をもつ奇妙なマニラプトラ類
  10.23.08
  ネイチャー10月23日号 Nature 455, 1105-1108 (23 October 2008) | doi:10.1038/nature07447
  Fucheng Zhang(張福成), Zhonghe Zhou(周忠和), Xing Xu(徐星), Xiaolin Wang(汪筱林) & Corwin Sullivan
  A bizarre Jurassic maniraptoran from China with elongate ribbon-like feathers


 アヴィアラエ類(鳥群)スカンソリオプテリクス科 Epidexipteryx hui が晴れて正式に
 学名となりました。

 アブストラクトほにゃ訳
 最近のコエルロサウリア類恐竜の発見により、恐竜から鳥への移行に関する知識は
 非常に豊富になった。しかし、この移行に近いとして報告された全ての分類群は、比
 較的良く知られたコエルロサウリア類の中にある。我々はここに、中国内蒙古、中期
 から後期ジュラ紀から産出した基盤的アヴィアラエ類(鳥群) Epidexipteryx hui (新
 属新種)を報告する。この新種には、いくつかの異なった獣脚類のグループ、とりわけ
 オヴィラプトロサウリアに見られる特徴の意外な組合せが見られる。
 系統分析から、これはEpidendrosaurus と姉妹群をなし、アヴィアラエ類の基盤で新
 しいクレードを成す。
 Epidexipteryx には2対の長く伸びたリボン状羽毛があり、四肢に飛行のための外装
 羽(正羽)を持っていない。この発見から、アヴィアラエ類系統のメンバーが外皮の装
 飾を中期から後期ジュラ紀に試みだし、この点において非鳥獣脚類から鳥類への移行
 に関係したさらなる証拠となる。

 Epidexipteryx hui 新属新種(中国名胡氏耀竜)
 属名 Epidexi(ギリシャ語)装飾;pteryx(ギリシャ語)翼、羽
 種小名 中国産中生代哺乳類の研究に大いに貢献した故Yaoming Hu(胡耀明)に献名

 完模式標本:IVPP V15471 古脊椎動物与古人類研究所蔵。羽毛を有するハト大の
 骨格。メインスラブとカウンタースラブがある。体重164gと推定され、いくつか
 の長骨先端が化骨していないことから、亜成体とされています。

 産地と層準:内蒙古自治区寧城市道虎溝。道虎溝の年代については議論されている
 が、可能な年代は中期から後期ジュラ紀。ただし刊行された放射性同位元素分析
 結果は152から168百万年(中期から後期ジュラ紀)。

 分類基準:中型のアヴィアラエ類。4本の長く伸びたリボン上の尾羽(ETF)がある。
 非常に平伏し著しく膨大した前側歯、および、尾の先端では10個の癒合しない尾椎
 骨により、遠位に先尖した尾端骨状の構造を形成している。ただ一つ知られる他の
 スカンソリオプテリクス科であるEpidendrosaurus と著しく異なる点は、尾椎の形
 態(Epidexipteryx では胴長の70%であるが、Epidendrosaurus では300%。前者が
 16個の尾椎骨で形成されるのに対し、後者は40個以上。前者の前関節突起は退縮し
 ているが、後者では著しく伸長している)。

 このほか目立つ特徴には、オヴィラプトロサウルス類のように、頭骨高が高い(頭
 骨長の60%)。歯はマシアカサウルスのように平伏している。しかも前側の歯の方が
 著しく大きい。これは基盤的オヴィラプトロサウルス類や基盤的テリジノサウルス
 類と同様(恐らくEpidendrosaurusも)などがあります。

 系統的位置づけでは、Epidendrosaurus とともにアヴィアラエ類の基盤で単系統の
 スカンソリオプテリクス科をなすとしています。この両者には多くの鳥類と同様の
 特徴を有するとともに、また多くの点でオヴィラプトロサウルス類や、程度は劣る
 もののテリジノサウルス類と同様の特徴も有しています。鳥類の起源に近いマニラ
 プトラ類の形態の相違は、これまで想定されていたより高く、鳥類の起源を理解す
 る上でジュラ紀獣脚類の重要性を強調するものとしています。

 外皮には、2種類の羽毛状構造が認められます。1つはリボン状の尾羽(ETF)。こち
 らには大雑把に言って羽軸があり、他方には羽軸がありません。他方は平行に伸び
 た繊維状の羽枝があり、これは他の羽毛恐竜や原始的鳥類に見られるものと同様で
 すが、その基部で櫛の元のように繋がっているものもあり、これは他には見られな
 いものだそうです。ETFの方は装飾が第一の目的だったろうとしています。また、
 他の羽毛恐竜の中に見られる正羽が見られないことも、Epidexipteryx の大きな
 特徴であるとしています。

 Epidexipteryx は既知で最古かつ最も基盤的な装飾羽をもつ獣脚類恐竜であり、基
 盤的アヴィアラエ類は中期から後期ジュラ紀には外皮装飾をを試みた。二次的に飛
 行しなくなったのでなければ、この分類群の四肢の羽毛に正羽がないことから、装
 飾羽は飛行羽及び飛行より以前に基盤的アヴィアラエ類の進化の中で出現したこと
 を示唆するとしています。
 毎日新聞 読売新聞 ライブサイエンス ナショナルジオグラフィック
 ニューサイエンティスト BBC(爪拡大写真あり) Tetrapod Zoology
 中国科学院 古脊椎動物与古人類研究所(画像大きくなる)