カナダ、アルバータ州から産出したアルバレツサウルス科Albertonykus borealis 10.13.08
カルガリー大ニュース 同大ファクトシート ナショナルジオグラフィック(日)
Nicholas R. Longrich, Philip J. Currie 2008.
Albertonykus borealis, a new alvarezsaur (Dinosauria: Theropoda) from
the Early
Maastrichtian of Alberta, Canada: implications for the systematics and
ecology
of the Alvarezsauridae
Cretaceous Research (2008),doi:10.1016/j.cretres.2008.07.005
カナダ、アルバータ州、Dry Island Buffalo Jump Provincial Parkで2002年、22個体以上の
Albertosaurus sarcophagus を発掘し、ロイヤルティレル博物館でAlbertosaurus の爪を他
の恐竜標本と比較している最中に偶然発見したものだそうです。右第3中足骨が2個あることか
ら、少なくとも2個体からなると考えられています。
Albertonykus borealis
属名は産地のアルバータ州+ギリシャ語onyx(爪)、種小名borealisはギリシャ語(北)
上部ホースシューキャニオン層(後期白亜紀 マーストリヒシャン 約7千万年前)
完模式標本:TMP 2001.45.91(左尺骨)。他に手の第1指、右脛骨、左脛骨近位端、右第3中足骨、
足指などが産出しています。体長75cm程度の小型の恐竜ということです。
北米からアルバレツサウルス科は他に2点産出していますが、それらは上部マーストリヒシャン
系の地層から産出しています。今回の標本は北米で産出した最古のものになります。
系統分析によると、南米産のアルバレツサウルス科がまず一つのグループにまとまります。つ
いで北米産の同科が一つのグループになり、アジアのアルバレツサウルス科はアジアだけで一
つのグループ(モノニクス亜科)としてまとまります。同科は南米で始まり、北米を通ってアジ
アに移住したという仮説と一致するとしています。
ついで、前肢の機能について議論しています。穴を掘るという説もありますが、Albertonykus
の前肢はモノニクス亜科の前肢に比べてもそのプロポーションが短いため、穴掘りには向かない
としています。また、後肢は地上走行に向いています。結局、ピックのように使って木の中の
昆虫の巣を掘り出したのだろうとしています。
一方、現生のアリクイやアルマジロなどの哺乳類と比較してAlbertonykus が昆虫食だったか
どうか検討しています。アリクイなどは舌を出すためでしょうか前歯がなくなっています。
アルバレツサウルス科でも前方の歯骨歯はありません。アリクイなどの歯は貧弱なものです。
アルバレツサウルス科の歯は単純な槍の穂先状の歯で、セレーションもなく、顎の奥に歯は
ありません。その他細長い顎、弱い下顎、顎関節面の退縮から、アルバレツサウルス科はアリ
やシロアリなどを食べていたとしています。
では、Albertonykus のいた時代、これらの昆虫は生息していたのかというと、アリは後期白
亜紀に出現した昆虫ですが、この時代にはごく少数しかいなかったようです。アルバータ州か
ら沢山の虫入り琥珀が産出しますが、アリは0.1%以下しか含まれていないそうです。
一方、シロアリは後期ジュラ紀から前期白亜紀に出現しています。ただし、シロアリにも地上
にアリ塚をつくる種類もいれば、木の幹に住む種類もいます。木の幹に住む方が原始的なよう
です。後期白亜紀には現生のシロアリの殆どの科が出現していたそうです。
しかし、シロアリは熱帯・亜熱帯性の昆虫で、アルバータのような高緯度に生息していたかが
問題になります。アルバータからシロアリの化石は発見されていないものの、シロアリが食った
木は独特の特徴を示すため、執筆者らはシロアリが食った木を探しました。結果として、ホース
シューキャニオン層からシロアリが食ったことを示す木の化石を発見し、Albertonykus が枯れ
木に巣くったシロアリを食べていたことは大いにありそうだとしています。モノニクスもモンゴ
ルでシロアリを食っていたのでしょう。