恐竜の繁栄は2度の幸運から 9.14.08
Brusatte, S.L., M.J. Benton, M. Ruta, G.T. Lloyd. 2008.
Superiority, Competition, and Opportunism in the Evolutionary Radiation
of Dinosaurs.
Science 9月12日 321: pp.1485-1488
ブリストル大ニュース アメリカ自然史博物館ニュース AFPBB
恐竜は後期三畳紀から白亜紀末まで1億年以上その繁栄を誇ってきました。しかし、恐竜が出
現した後期三畳紀には、強力なライバルがひしめいていたのです。それは、同じ主竜類の大きな
グループ、クルロタルシ類です。クルロタルシ類に含まれるグループで現生はワニしかいません
が、当時はフィトサウルス類(植竜類)、アエトサウルス類(鷲竜類)、ラウイスクス類など、多
様なグループが存在していました。
本論文では、恐竜が繁栄した原因は、例えば直立2足歩行など進化的に優越していたからなのか、
それとも別の理由によるものなのか検討しています。
そこで、主竜類の64の分類群から437の形質を選んで作成した主竜類の新しい系統に基づき、そ
の進化の度合い及び形態的相違(形態空間 (morphospace))を測りました。その結果、後期三畳紀
における恐竜とクルロタルシ類両グループの進化の度合いに違いはなく、形態的相違(形態、ライ
フスタイル、食性など)については、クルロタルシ類の方が優っていたことが判りました。
このことから、恐竜は進化の競争の勝者だったわけではないとしています。
三畳紀、恐竜は2度の絶滅をくぐり抜けています。1度目は約2億2800万年前(Carnian-Norian
extinction event(CNEE))この時、リンコサウルス類やディキノドン類などが絶滅しました。そ
して2度目は、約2億年前、三畳紀末の大絶滅です。この時ワニの系統を除くクルロタルシ類は
全て絶滅してしまいました。幸運にも生き延びた恐竜は、空白になったニッチに進出して繁栄
を獲得したのです。