非鳥獣脚類恐竜の中にある、鳥類ゲノムサイズと構造の起源 3.08.07
Origin of avian genome size and structure in non-avian dinosaurs
Chris L. Organ, Andrew M. Shedlock, Andrew Meade, Mark Pagel and Scott V. Edwards
Nature 446, 180-184 (8 March 2007) | doi:10.1038/nature05621
ゲノムとから生物の系統を調べるというと、その変異の大きさと変異に要する時間から、系統を
推定するというやり方は、よく知られていますね。
今回の論文ではゲノムの変異ではなく、その推定されるサイズから、系統を探っています。
また、その前段階として、細胞の大きさとゲノムサイズがよく相関することから、細胞の大きさ
を比較しています。
さらに、現生動物だけでなく絶滅した恐竜も含めて比較するため、化石からもそのサイズを測定
できる、骨細胞を用いています。
さて、鳥類のゲノムサイズは、有羊膜類の中で一番小さいのだそうです。大きいゲノムや細胞を
持つコストを抑えて、飛行に適応したのでしょうか?それには、有羊膜類でどのようにゲノムサ
イズが進化したかを調べる必要があります。しかし、現生動物のゲノムサイズの比較だけでは、
この系統の生物の1%しか調べていないことになるのだそうです。
この研究では、31種の恐竜(絶滅鳥類を含む)と26種の現生四肢動物の骨細胞を比較観察し、そ
のサイズを測定しています。系統樹とベイズ比較解析法ソフトウエアを用いて、骨細胞サイズが
現生脊椎動物のゲノムサイズををよく予測することが判明しました。
骨細胞サイズから導き出されたゲノムサイズを、最新の恐竜系統に当てはめると、次のことがわ
かりました。
・ゲノムサイズの減少は、Herrerasaurus を基盤的竜盤類とするなら、基盤的竜盤類で2億5千万
年前に始まり、2億3千万年前までに起こった。一方、鳥盤類恐竜ではゲノム減少は起こってい
ない。そのサイズは、現生のワニなど主竜類と同じぐらいだったろう。
ゲノムサイズの減少は、細胞の大きさを小さくし、これは赤血球のサイズが小さくなることも意
味します。すると、その体積に比べ表面積が増えるので、ガス交換の能力が増加します。鳥類に
備わるこの能力は、この研究から、竜盤類/獣脚類の系統の初期、ゲノム減少と同時期に起源をも
ち、古骨組織学を用いた恐竜成長生理学に関する研究とも一致するであろうことを示唆すると、
しています。
アブストラクトほにゃ訳
鳥類ゲノムは、反復配列及び非コードDNAが他の有羊膜類のゲノムに比べ少ないので、小さく
合理化されている。この状態は、大きいゲノムや大きい細胞を持つことによる代謝のコストを
下げることにより、鳥類が飛行に適応する一つの鍵であると示唆されてきた。しかしならが、鳥
類におけるゲノム構造の進化は、あるいは他のどんな系統でも、しばしば長い間に絶滅した類縁
のゲノム情報が欠けるため、研究が困難である。ここに我々は、現生脊椎動物では骨細胞のサイ
ズとゲノムのサイズがよく相関することを、新しいベイズ式解析法を用いて明らかにし、ゆえに、
その相関性を用いて数種の絶滅鳥類を含む31種の恐竜のゲノムサイズを推定した。我々の結果か
らは、決まったように鳥類の飛行と関連付けられる、小さいゲノムは、竜盤類恐竜の系統で、2億
5千万年から2億3千万年前、最初の鳥が生まれるはるか以前に進化したことが示される。比較する
と、鳥盤類恐竜のゲノムは、はるかに大きかったと推定され、それは恐らく恐竜類の祖先に典型的
だった。ゲノム比較データにより、反復DNAの一種であるゲノム全体に散在する可動性因子は、竜
盤類恐竜の系統では全ゲノムサイズの5〜12%だったが、鳥盤類恐竜の系統では全ゲノムサイズの
7〜19%と推定され、竜盤類恐竜系統で反復配列がより不活性になったことを示唆している。
これらゲノムの特徴は、羽毛、肺の革新、ヒナの保育及び営巣のように、以前には鳥類のものと
考えられてきたが、今では非鳥恐竜で始まったと考えられる特性のリストに加えられるべきだろう。
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