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DeinonychusBambiraptor の前肢機能の比較 1.05.07
 PHIS SENTER
 COMPARISON OF FORELIMB FUNCTION BETEWEEN DEINONYCHUS AND BAMBIRAPTOR (THEROPODA: DROMAEOSAURIDAE)
 Jorunal of Vertebrate Paleontology 26(4):897-906 December 2006

 アブストラクトほにゃ訳
  ドロマエオサウルス科 Deinonychus antirrhopus 及び Bambiraptor fenberugi の前肢
 骨の化石及びキャストは、動作範囲の決定及び機能的仮説をテストするために、手動操作
 された。Bambiraptor における肩の動きは、Deinonychus に関するこれまでの研究により
 明らかになったことと類似する。上腕骨は、水平に近い位置まで引き寄せられ、高く上げ
 ることができる、また垂直を幾分超えて伸ばすことができる。この2つの分類群において、
 肘は強く屈曲することができるが、十分に伸ばすことはできない。回外及び回内は橈骨の
 動きにより起こりえないが、その橈骨は尺骨に比べ固定されている。手のひらは、ゆえに
 手首を伸ばす間を除き、内側を向いているが、それはどうしても回外を引き起こす。
 Deinonychus の指は、曲げている間広がっている。対照的に、第一中手骨と第三指第三指
 節の遠位関節面の捩れから、Bambiraptor の第一指と第三指を曲げている間互いに近づく
 ようになるが、これは恐竜における対向指が知られる最初の例である。Deinonychus 及び
 Bambiraptor の前肢における形態及び動作範囲は、手首を曲げた両手による保持動作、片
 手で対象物を胸部までつかむこと、手を鉤として使うこと、腕を振る又は腕を上げるディ
 スプレイ及び、前肢をバランス保持に使うことを可能にしている。羽毛の生えた翼がもし
 あったなら、地面にある対象物を手で捕らえることや、両手で対象物を胸部までつかむこ
 とや、第二指を凹部を探るために用いるのを妨げた。前肢を掘るために使うことは出来な
 かった。Bambiraptor の指が対向指だったので、片手で物を持つことができたが、
 Deinonychus は物を持つには両手を使わなければならなかった。

 ※回外:手のひらを体幹の外側へ向けること。手のひらを上にした状態から、下に向ける
     ような動きをいう。
  回内:手のひらを体幹の方へ向けること。反対に手のひらを上に返すような動きをいう。
  この動きは、手首の部分で起こるように見えるが、実際には前腕の2本の骨 (橈骨と尺骨)
  が互いに回転するように運動する。
  参考:医学英単語ミニマガジンNo.172

 Deinonychus antirrhopusBambiraptor fenberugi の化石標本及びキャストを用いて、
 前肢の関節面をあわせて実際に動かして上腕骨から末節骨に至る前肢の個々の関節可動範
 囲(角度)を測定し、どのような動きが出来たかを検証しています。検証の前提として、ど
 のような動きができたのか15の仮説を立て、検証の結果、両者ともできなかったか、
 Deinonychus のみできなかったか、結果を出しています。

 その結果の要約を見ると、
 両者とも前肢で出来なかった動作
 ・前肢を使って、引っ掻いて掘ること。
 ・鉤で引っ掛け引き上げる形で掘ること。
 ・指を対象物の周囲に沿って曲げて、片手で持つこと。
 ・背の上または頭より先前方の対象物を捕らえること。
 ・背や尾を掻くこと。
 ・第一指又は第二指で(岩の割れ目など)凹部を探ること。

 両者とも前肢で出来た動作
 ・手のひら又は爪を用いて両手で対象物を持つこと。
 ・鉤で引っ掛けること。
 ・頭及び胴の下で対象物を捕らえること。
 ・対象物を口まで運ぶこと。
 ・背腹側及び頭尾側に前肢をディスプレイすること。
 ・バランスをとること。
 ・頭、頚部、後肢を掻くこと。
 ・第三指で(岩の割れ目など)凹部を探ること。

 Bambiraptor のみが出来た動作
 ・対向指の間に対象物を持つこと。・・・Deinonychus と決定的に異なる点であるとと
  もに、恐竜の中で対向指が知られる初めての例。これは鳥類の飛行の進化の一段階を
  示すものでなく、独特の特殊化を示している。

 「獣脚類の進化は「鳥類製造所」より以上であり、獣脚類の歴史は鳥類の飛行の起源よ
 りはるかに沢山のことがある」と結んでいます。