消えた、不可解な獣脚類 Aliwalia rex 11.05.06
10月24日に論文名だけ紹介したものです。
Solving a dinosaurian puzzle: the identity of Aliwalia rex
Galton
ADAM M. YATES Historical Biology, 2006; 1–31, iFirst article
アブストラクトほにゃ訳
南アフリカ後期三畳紀産のEucnemesaurus fortis Van Hoepen 1920 は、不可解な恐竜分類群
Aliwalia rex Galton 1985 の古参同物異名であることが立証された。この僅かにしか知られない
分類群の新標本が記載された。Eucnemesaurus は明確に竜脚形類であり、南アフリカ後期三畳紀
の竜脚形類分類群の多様性を6に増加させる。それはアルゼンチン後期三畳紀産のRiojasaurusと
数多くの大腿骨の派生形質を共有し、それらを収めるためにリオハサウルス科(新分類群)が設立
された。これらの結論は、46の竜脚形類及び他の基盤的恐竜形類分類群の353骨学的形質を用いた、
包括的な分岐分析により支持される。この分析は、従来の'古竜脚類'群集が側系統であることを
支持する。
Aliwalia rex は、Galtonにより1985年に記載されたヘレラサウルス科と示唆される恐竜です。
この時代の獣脚類としては非常に大型で、体長12m、体高3.5mにもなるとされています。この模式
標本は、大腿骨と上顎骨からなっています。これらの標本についてYATESが再検討しました。これ
らの標本は、1860年代初頭に南アフリカの収集者 Alfred “Gogga” Brown(1834-1920)により収集
され、5個の船荷となってヨーロッパ各地の博物館に送られたものの一部です。
その1つはウイーンの自然史博物館に送られました。その中に特異な恐竜の大腿骨があり、それ
とロンドンに送られた荷物の中にあった肉食主竜類の上顎骨が同じ標本に属すると考えられたので
した。 フォン・ヒューネが最初にこの大腿骨をEuskelosaurus属と記載しました(Huene 1906)。
Euskelosaurus browni Huxley 1866 は、Brown がロンドンに最初に送った船荷で送られた、大型
竜脚形類の骨に与えられた学名ですが、その、後模式標本に竜脚形類の特徴が見られないことから、
現在無効名とされています。その後、Galtonは、この大腿骨がEuskelosaurus browni後模式標本や、
他の全ての竜脚形類と非常に異なっているとし、新たにAliwalia rex として記載しました。その
系統的位置については明確ではありませんが、Galton はヘレラサウルス科であることを示唆して
いるそうです。一方、Sues(1990)は、これとHerrerasaurus を関連づける何ら共通点がないとし、
恐竜類の所属不明としかいえないとしています。
2003年、Witwatersrand大学の古生物学者たちが南アフリカRosendal地方の下部エリオット層から
小規模な恐竜化石群集を発見しました。その中にあった大腿骨の両端が、Aliwalia rex 大腿骨と同
じ特徴をもつとすぐにわかりました。130年以上たって第2標本が見つかったのです。ところが、こ
れに関連する胴椎骨は、竜脚形類の特徴をもっていたのです。しかし、この組合せはAliwalia rex が
最初でないことがわかりました。Van Hoepen が1920年に記載した Eucnemesaurus fortis は、長く
Euskelosaurus browniの同物異名として忘れ去られていましたが、ここに記載された標本が、同じ特
徴の大腿骨と竜脚形類の脊椎をもつ組合せでした。しかも、この標本には、同一個体に属する恥骨断
片、後肢及び尾もあったため、Aliwalia rex はEucnemesaurus fortis の新参同者異名であり、アルゼン
チン三畳紀後期から産出している竜脚形類Riojasaurus incertus と近縁関係にあることもわかりました。
それで、新たに記載をしているのですが、ここで新しい分類群が設立されています。
一つは、Massopoda 。これは、Saltasaurus loricatus を含むがPlateosaurus engelhardti を含まない、
最も包括的なクレードで、Sauropoda(竜脚類)と同じ定義に基づくが、ここで支持される系統(そしてど
こでも) におけるSauropodaは、従来のSauropodaのどんな用法も越えて拡大され、再定義される必要が
あるとされています。この論文の系統図を見ると、このMassopoda以下に後述するリオハサウルス科、
マッソスポンディルス科が含まれ、従来の古竜脚類、竜脚類と2分される系統と大幅に異なっています。
古竜脚類という分類群は側系統ということになり、解体されています。
なお、Massopodaの語源は、Massa(ラテン語で塊り)+pous(ギリシャ語で足)。また、マッソスポンディ
ルス科及びSauropoda(竜脚類)という2つの良く知られ異なった、Massopoda内の分類群の短縮形でもある。
Massopoda の下位でEucnemesaurus fortis はリオハサウルス科という新科に属することになってい
ます。これはRiojasaurus incertus を含むがPlateosaurus engelhardti、 Massospondylus carinatus、
又は Anchisaurus polyzelus を含まない最も包括的なクレードと定義されています。リオハサウルス科
にはRiojasaurus incertus と Eucnemesaurus fortis が含まれます。
その上で、Eucnemesaurus fortis Van Hoepen 1920 は、以下の分類基準をもつとされています。中位
胴椎において旁横突起薄層から分岐し、中位chonosを分割する小さい副薄層があること;小転子の
近位端が急に終わること;湾曲し斜めに長い軸をもつ第四転子。