新しいジュラ紀後期竜脚類において骨組織は島嶼矮小化を示す 6.08.06
ジュラ紀後期、約1億5千万年前、島嶼となったヨーロッパで矮小化した竜脚類
Europasaurus holgeri を記載しています。
最大の個体でも体長6.2m(幼体は1.7m)とされています。
毎日新聞
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ナショナルジオグラフィック
ボン大学プレスリリース(ドイツ語。大サイズ写真あり)
ボン大学プレスリリース(英語。写真なし)
ネイチャー6月8日号
Bone histology indicates insular dwarfism in a new Late Jurassic sauropod
dinosaur
P. Martin Sander, Octávio Mateus, Thomas Laven and Nils Knötschke
Nature 441, 739-741 (8
June 2006) | doi:10.1038/nature04633;
論文はOctávio MateusのLusodinosからダウンロードできます。
アブストラクトほにゃ訳
竜脚類恐竜はこれまで陸上に生息した中で最大の動物であり、少なくとも3つの系統で
真に巨大な姿をしている。成体で5t未満の種は非常に稀であり、小型の竜脚類の骨は通
常幼体を表している。
ここに私達は基盤的マクロナリア類竜脚類、Europasaurus holgeri gen. et sp. nov.,の
非常に小さい標本を記載し、骨組織学に基づき、私達はそれが矮小化種であったことを
示す。非常に素晴らしい頭蓋材料が含まれる化石は、ドイツ北部キンメリッジアンの海
成層から産出し、全長1.7から6.2mにわたる11個体以上を記録した。部分的骨格及び個々
の骨との形態的重複から、全ての材料がこの同じ分類群に関連する。大腿骨及び脛骨の
皮層組織により、標本間のサイズの違いは異なった成長段階-幼体から完全に成長しきっ
た個体まで-によることが指摘される。この小型恐竜は、Lower Saxony 堆積盆地周辺に
あった大きい島嶼の一つに生息していたに違いない。大型竜脚類の長骨組織と比較する
と、島嶼矮小化種はそのより大型の祖先から成長速度を低減させて進化したことが示唆
される。
Sauropoda 竜脚類
Neosauropoda 新竜脚類
Macronaria マクロナリア類
Europasaurus holgeri gen. et sp. nov.
属名はヨーロッパ産の爬虫類の意味。
種小名はこの骨を最初に発見したHolger Luedtkeに献名。
完模式標本:DFMMh/FV291:関節していない左前上顎骨;右上顎骨;右方形頬骨;後頭部;
左外蝶形骨-眼窩蝶形骨複合;右上角骨;右角骨;左歯骨;歯;頚椎骨及び仙椎骨;及び
一個体の頚肋骨及び胴肋骨。
参照材料:関連したものから部分的に関節した骨格として保存され、若い幼体(推定体長
1.7m)から成体(体長6.2m)まで含む、少なくとも10個体の頭蓋及び頭蓋より後ろの部分。
産地と層準:ジュラ紀後期、キンメリッジアン中期の海成炭酸塩岩、Lower Saxony 堆積
盆地、Langenberg発掘地のセクション93層
ドイツ北部ニーダーザクセン州Goslar近郊のOker。
分類基準:Europasaurus holgeri gen. et sp. nov.は以下の明白な固有派生形質を示す:
前上顎骨の鼻骨突起は前胴側に突き出ている;頚椎骨椎体の後位胴側縁にある内側切痕;
著しく後方に突き出ている、肩甲骨の肩峰;及び距骨の横断幅はその腹背高及び前後長の
2倍。Europasaurus はCamarasaurus と、後眼窩骨の翼形をした後部突起が前部突起より
わずかに長く幅広くなっている点で異なるが、一方それはCamarasaurus でははるかに短
い。またEuropasaurus はCamarasaurus と、その短い鼻骨-前頭骨接触;後面観で長方形
をした頭頂骨及び分岐していない前仙椎骨神経棘の諸点でも異なる。Europasaurus は、
Brachiosaurus とより短い鼻口部、方形頬骨が鱗状骨と接触している;頭蓋の腹側縁に
頬骨が参与している;短い鼻骨-前頭骨接触;及び上腕骨が前内側に平坦で近位及び遠位
端が平行でない。Europasaurus はLusotitan atalaiensis と腸骨及び距骨の形態が異な
り、可能性として有効な‘Cetiosaurus’ humerocristatus とそのより短くあまり目立
たない三角胸筋稜が異なる。Europasaurus は殆ど全ての既知の新竜脚類とその矮小化し
た成体の体の大きさで異なる。
系統的位置づけは、マクロナリア類の中でCamarasaurus より派生し、ブラキオサウルス
科及び全ての(より派生した)ティタノサウルス形類と姉妹群を成しています。
少なくとも11個体のうち、6個体について骨組織を調べています。体長1.75m、2m、3.5m、
3.7m、4.6m、6.2mです。その結果、これらの化石は幼体から亜成体を経て完全に成長した
成体まで、成長の各段階を表していることがわかりました。
当時は海だったLower Saxony 堆積盆地周辺の島は最大20万平方キロメートル未満の面積
だったそうです。このような島では大型竜脚類の生息を支えることができません。
Europasaurus の祖先は島嶼に移住するうちに急速に矮小化していった、あるいは海面上
昇により島の面積が縮小する中で矮小化していったことが示唆されるとしています。
では、その矮小化はどのようにして起こったかというと、長骨皮層組織の研究から、成長
速度が遅くなることにより大型化しないようになったことが示唆されるとしています。