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知られる中で最小のトリケラトプス頭蓋 5.07.06
  THE SMALLEST KNOWN TRICERATOPS SKULL: NEW OBSERVATIONS ON CERATOPSID CRANIAL ANATOMY AND ONTOGENY
  MARK B. GOODWINA, WILLIAM A. CLEMENSB, JOHN R. HORNERC, KEVIN PADIANB
 Journal of Vertebrate Paleontology Vol.26 No.1 pp.103–112

 米、モンタナ州、Garfield郡のヘルクリーク層(白亜紀末)から発見されたトリケラトプス
 幼体の頭蓋を記載しています。推定頭蓋長は30cm足らずで、これは成体の6から
 7分の1にあたります。このような幼体の頭蓋が発見されたのは初めてのことです。
 トリケラトプスとわかったのは、2本の長さ35mmの後眼窩角と、高度にホタテ貝殻状
 をした、窓(穴)のないフリルからだそうです。
 
 アブストラクトほにゃ訳
 最小のTriceratops頭蓋(UCMP 154452)から、ケラトプス科(ケントロサウルス亜科+
 カスモサウルス亜科)の頭蓋成長の最初期段階に対し、新しい個体成長の末端の構成
 要素を提供する。頭頂骨、鱗状骨、後眼窩骨、方形頬骨アーチ、および脳函にわたる
 共骨化が欠けているので、後に成体であいまいになる縫合接触と骨表面が保たれてい
 る。Triceratops における角とフリルの初期発達と形態を記録する能力は、それらの
 機能的な役割を再評価することを許す。UCMP 154452は、頭蓋フリル装飾と後眼窩角
 が成体に対し限られているが、この標本の早期の年齢から始まったことを示す。
 この証拠は、ケラトプス科の角とフリルの機能は、この若い形態では性的ディスプレ
 イとして機能しなかったかもしれないので、視覚コミュニケーションと種の認識に潜
 在的に重要だったという仮説を支持する。UCMP 154452 のいくつかの特徴は成体形質
 の状態を予想させ、また真似るものだが、いくつかの脳函の形質は、より基盤的なネ
 オケラトプス類の幼体および成体段階を反復発生している。

 この幼体頭蓋のもつ主な特徴にはこんなものがあります。
 頭蓋を構成する個々の骨は細かい筋があり、非常に多孔質なのでで、とても早く成長
 した組織であることが示されるそうです。また恐竜の幼体に一般的に言えることです
 が、眼窩領域が比較的大きく、顔面が短くなっています。フリルの大きさは成体だと
 頭蓋底長の65から70%を占めるのに対し、この幼体では推定頭蓋底長の48%に過ぎま
 せん。

 幼体のフリルは周囲がギザギザのホタテ貝殻状の形をし、成体のように後方に大きく
 伸び凹面になった扇形をではなく、フラットな正方形に近い(亜成体及び成体ではフ
 リルを構成する頭頂骨及び鱗状骨の後方周囲に上後頭骨ができ、骨化して縁を形作る)。
 後眼窩角の成長は既に始まっている(長さ35mm)。吻側に約10°向いているが、より年
 長の幼体や成体のように後ろ側に湾曲はしていない。表面の状態からケラチン質の鞘
 に入っていた事が示される。鼻骨領域は(骨は残っていないが)、成体の状態に比べ元
 に戻っている;その窓は幼体ではなかったかもしれない。脳函の特徴はより基盤的な
 ネオケラトプス類の成体の状態を思い起こさせる。

 その角とフリルについて性的ディスプレイであったかどうか論じていますが、結論と
 しては、この成長の初期にある幼体でフリルと角があったことから、それらは性的ディ
 スプレイや敵対的遭遇のためと同程度、種のコミュニケーションのための視覚的組織
 であり、ケラトプス科及びその近縁では、実質的に性的二形はまだ確立していなかっ
 たとしています。