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三畳紀中国の海から産出した特異な主竜類 3.24.06
 An unusual archosaurian from the marine Triassic of China
 Chun Li, Xiao-chun Wu , Yen-nien Cheng, Tamaki Sato(佐藤たまき) and Liting Wang
 Naturwissenschaften onlinefirst DOI: 10.1007/s00114-006-0097-y

 中国貴州省の三畳紀中期海生石灰岩層から産出した、他に類例のない主竜類を
 記載しています。海生環境にモザイク的に適応した化石です。海生適応の特徴
 として、外側方向に平たくなった長い尾を筆頭に、板状の肩甲骨と烏口骨、非
 常に細長く伸びた頚肋骨のある長い頚部、皮骨の退縮があげられています。一
 方、腰帯と後肢には海生適応の変化は見られません。数々のデータから、この
 動物は沿岸性-島嶼環境に生息していたと示唆され、この生態は少なくとも4千
 万年後ジュラ紀の海生ワニ形類や、現生ワニの海産種と収束する一方、三畳紀
 主竜類は非海生環境に限定されていたというこれまでの考え方と反するもので
 す。そのモザイク的特徴から、原始的主竜類にこれまで知られていなかった環
 境適応形態を表していると、しています。

 Archosauria
 Crurotarsi
 Qianosuchus mixtus gen. et sp. nov. (混形黔鰐)
 属名は貴州省の略称、黔(Qian)+suchus(ラテン語でワニ)
 種小名は、主竜類における海生と陸生の特徴が組み合わさっているところから
 
 完模式標本:IVPP V13899 前肢遠位と尾の近位端を失っている骨格。
 副模式標本:IVPP V14300 殆ど完全な頭蓋と下顎がある不完全骨格。
 ほかにNMNS(台湾国立自然科学博物館)000408/F00387が参照されています。
 産地と層準:貴州省南西部盤県(Panxian)新民(?)(Xinmin)
       関嶺(Guanling)層(三畳紀中期Anisian)

 分類基準:3mを超えるほどの中型主竜類。以下の派生形質により他の全ての
  主竜類と区別される:9本の短剣状の歯がある低い前上顎骨;頭蓋にある他
  のどの開口部より長い、前方に位置し、主に背側は鼻骨、腹側は上顎骨で
  形作られる外鼻孔;外下顎窓の輪郭は半楕円形;第2〜第9頚椎の神経棘は
  その長さに対し非常に幅広く、その先端に5対の小さい皮骨がある;尾椎の
  神経棘は非常に長く、椎体より少なくとも4倍長い、また尾中位の血道弓よ
  り長い;頚肋骨は長く伸び、その殆どは相当する椎体より4倍以上長い;肩
  甲骨は板状で手斧形の輪郭をしている。