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ジュラ紀中期の泳ぐ哺乳形類及び初期哺乳類の環境形態的放散 2.24.06
 A Swimming Mammaliaform from the Middle Jurassic and Ecomorphological
 Diversification of Early Mammals
 Qiang Ji(季強), Zhe-Xi Luo(羅哲西), Chong-Xi Yuan, Alan R. Tabrum
 サイエンス2月24日号 SCIENCE VOL 311 pp.1123-1128

  中国内モンゴル自治区寧城、道虎溝の九竜山(Jiulongshan)層(ジュラ紀中期、約
 1億6千400万年前)から産出した、哺乳形類ドコドン類の新属新種の記載です。なお
 哺乳形類は、従前の分類で哺乳綱といわれたものと同義です(アデロバシレウス+
 シノコノドン科+正哺乳類 哺乳類の分類より)。

 Castorocauda lutrasimilis, gen. et sp. nov.
 属名はCastor:ラテン語でビーバー+cauda:ラテン語で尾。その幅広く平らなで
 うろこ状の水泳に適したビーバーのような尾から。
 種小名はlutra:ラテン語でカワウソ。+similis:ラテン語で似ている。現生カワ
 ウソと幾つかの歯及び脊椎の特徴が類似しているため。
 
 ドコドン類はジュラ紀中期からジュラ紀後期にかけて生息していましたが、絶滅し
 た分類群です。その系統的位置づけは、Hadrocodiumより基盤的だが、Sinoconodon
 及び Morganucodonより派生的ということです。
 
 その最も驚くべき特徴は、半水生適応した骨格及び毛皮、そして魚食に適した歯で
 す。これは、半水生適応した中生代哺乳類の初の証拠であるだけでなく、中生代哺
 乳類が、これまで考えられていたよりもはるかに広範囲の環境に放散していたこと
 を示しています。
 Castorocauda は上毛と下毛をもつ毛皮に覆われていました。これまで知られる中で
 最も原始的な、毛皮をもつ哺乳類です。短く密集した下毛はこの動物を水から守って
 いたのでしょう。

 Castorocauda の臼歯は三垂歯類トリコノドンに似た形で、小魚や小型無脊椎動物を
 食べるのに適した形になっています。これは現生のアザラシやカワウソとも類似して
 います。
 尾椎骨は背腹方向に平たくなっているなどの特徴があり、これも現生のビーバーやカ
 ワウソに類似しています。尾の近位25%は上毛に覆われ、中位50%はウロコとまばらな
 毛、遠位25%はウロコに覆われていたそうです。
 その前肢は穴を掘るのに適した形をしています。その前肢を使って土手に巣穴を掘っ
 たのでしょう。羅哲西は、その生態は現生のカモノハシに似ていたのだろうと述べて
 います。
 肋骨は板状で、隣りの肋骨に1/3ほど重なっています。

 完模式標本の鼻先から尾までの長さは425mmです。しかし、実際の大きさはもっと大き
 かっただろうとしています。体重は最大約800gに達しただろうとしています。
 ジュラ紀の哺乳類で最大のものです。同時代の哺乳類は小型の夜行性で昆虫食や雑食の
 ネズミのようなものという固定観念が崩されましたね。
 毎日 読売
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