獣脚類の特徴を備えた、良好に保存されたArchaeopteryx標本 12.02.05
A Well-Preserved Archaeopteryx Specimen with Theropod Features
Gerald Mayr, Burkhard Pohl, D. Stefan Peters
サイエンス vol.310 No.2 pp.1483-1486 DECEMBER 2005
非常に良く保存されたArchaeopteryx(始祖鳥)第10標本(Thermopolis標本:
ワイオミング恐竜センターの所在地から)を記載しています。
アブストラクトによれば、
記載により、原鳥類の骨学は非鳥獣脚類のそれと同様であることが示されます。
新標本に保存された特徴の中には、脚の第ニ趾がドロマエオサウルス類やトロ
オドン科恐竜に見られるように、過伸展性を見せる(爪が上を向くまでゆびを
大きく動かせるることでしょう)点、4方向に広がる口蓋骨(非鳥獣脚類は4方、
真鳥類は3方)、脚の第一趾が他の指と鳥類のように十分対向せず、非鳥獣脚類
のように同じ向きを向いている点が認められます。
これらの観察結果から、鳥類の祖先獣脚類であることをさらに証拠付けるとし
ています。くわえて、過伸展性を見せる第ニ趾の存在は、基盤的デイノニコサ
ウリア類(トロオドン科及びドロマエオサウルス類)とアーケオプテリクス科
を区別する境界をぼやかせるとともに、鳥類の単系統に挑戦するものとなって
います。
新しく記載された標本は、独ゾルンホーフェンの未確認地で発見され、最近、
ワイオミング恐竜センター(WDC-CSG-100)に収蔵されるまで個人蔵だったもの
です。翼と尾の羽毛印象は良好に保存されています。また、頭蓋は非常によく
保存され、また背側面(頭の上側)を見せる唯一の標本です。キャストはMayrの
所属するゼンケンベルグ自然史博物館に収蔵されるそうです。
記載された主な形質には、次のようなものがあります。
・2個の副眼窩前開口部の存在:アイヒシュタット標本で確認されていたが、疑
問視する見方もあった。これは、獣脚類恐竜の上顎窓及び前上顎窓と相同。
・口蓋骨にある短い頬骨突起:この存在により、非鳥獣脚類のように口蓋骨が4
方であり、真鳥類のような3方ではない。
・外翼状骨には鉤状の頬骨突起があり、頬骨と接触している。
・烏口骨:この標本では殆ど完全な右烏口骨の前側面が見える。これまでその
形ははっきりしなかった。その形全体は長方形に近く、頭尾方向に湾曲して
いり、凹面になった外側縁とよく発達した外側突起がある。この形はドロマ
エオサウルス類に類似している。
・脚の距骨:獣脚類恐竜のように距骨の上行突起があるのか、それとも新顎類
(現生鳥類のうちダチョウ類やシギダチョウ類など(古顎類)を除いたキジ・
カモ類以降のもの)のように狭い「前脛骨」があるのか議論されていたが、こ
の標本では獣脚類恐竜と同様の広い上行突起が明確に見える。
・脚の第一趾:現生鳥類のようには十分対向していない。中足骨が背側を見せ
ているのに対し、第一趾第一趾節は内背側を見せている。関節状態が死後に
ずれた形跡もない。よって、第一趾は内側に伸び、現生鳥類のようにいつも
反転していなかったと結論する。したがって、Archaeopteryx は木にとまる
足を持たず、条件的に樹上性だった。
・脚の第二趾:デイノニコサウリア類(ドロマエオサウルス類+トロオドン科)
及び白亜紀後期の鳥類Rahonavisのように過伸展趾である。このことは、そ
の第一趾節関節の滑車が近背側に膨大していることからも明確に示される。
爪も他の趾より大きいが、デイノニコサウリア類ほど大きくはない。過伸展
第二趾があることは、デイノニコサウリア類+アヴィアラエ類クレードの派
生形質となるが、それはArchaeopteryx+Rahonavisよりも現生鳥類に近い鳥
類では失われた。
これら得られた形質により系統解析をしたところ、鳥類の分類群は単系統にな
りませんでした。ArchaeopteryxとRahonavisはデイノニコサウリア類の外群と
なり、共に姉妹群をなしています。一方Confuciusornis(孔子鳥)は基盤的ドロ
マエオサウリア類のMicroraptorと姉妹群をなしています。したがって、鳥類
がArchaeopteryxと現生鳥類を含むものと定義されるなら、その中に十分発達し
た鳥類タイプの翼羽を持つものがいる、「デイノニコサウリア類」と、これま
でされてきた分類群を本当に含むことになるのかもしれないと結論しています。
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ナショナルジオグラフィック 骨格復元図(skeletaldrawing.com)
ロッキーマウンテンニュース(ワイオミング恐竜センターのセキュリティ不十分)
ワイオミング恐竜センター
Archaeopteryx新標本プレスリリース
標本の由来と所有権について