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SVP2005総会発表要旨から その1 9.24.05
 どこまで紹介できるかわかりませんが、目についたものを目次の順番に紹介
 してみます。全部訳していてもほにゃ訳ですよ
 

中国遼寧省下部白亜系産出、クテノカスマ科翼竜
  A CTENOCHASMATID FLYING REPTILE (ARCHAEOPTERODACTYLOIDEA,
  PTEROSAURIA) FROM THE LIAONING DEPOSITS, LOWER CRETACEOUS, CHINA

 汪筱林他
 遼寧省四合屯義県層産の翼竜化石について報告しています。骨の癒合状態から亜成体と
 しています。柔組織では、毛状のもののほか、頭部に眼球と思われるものが残っているそ
 うです。眼球は翼竜で初めて報告されるものです。この翼竜は熱河群で確実にクテノカス
 マ科とされる標本だそうです。

ブラジルARARIPE盆地産の非常に保存状態がよい翼竜
  NEW EXTREMELY WELL PRESERVED PTEROSAUR SOFT TISSUE FROM THE
  ARARIPE BASIN (BRAZIL) AND DISCUSSION OF THE PTEROSAUR WING MEMBRANE
  KELLNER, Alexander他
  立体的に保存された柔組織がある翼竜化石の報告です。上腕骨と橈骨、尺骨の間にある
 前翼膜の一部です。異なった方向に重なった筋繊維や血管がわかるそうです。これから、
 翼膜は数層に重なった筋繊維と外側の毛状組織で成っていることがわかるそうです。
 筋肉で翼の緊張状態をコントロールできるので、飛行中に緻密なコントロールもでき、飛行
 していないとき翼をたたむのにも役立ったかもしれないとしています。

中国新疆産の最古のプテロダクティルス上科翼竜
  JURASSIC PTEROSAURS FROM XINJIANG, CHINA: THE EARLIEST PTERODACTYLOID
  AND THE ORIGINS OF THE GROUP
  ANDRES, Brian他
  IVPPとジョージ・ワシントン大の合同発掘で、新疆ジュンガル盆地五彩湾で採集された、翼
 竜化石の報告です。数体報告していますが、下部石樹溝(Shishugou)層から採集されたプテ
 ロダクティルス上科翼竜化石は、同層がジュラ紀中期とされるので、同上科で最古のものと
 なるそうです。また、同層が陸成層であり他の同上科化石も大部分陸成層から産出している
 ため、同上科の起源は陸地だったのではとしています。

遼寧省西部白亜紀前期のコリストデラ類
  EARLY CRETACEOUS CHORISTODERES FROM WESTERN LIAONING,
  CHINA: TAXONOMIC DIVERSITY AND PHYLOGENETIC RELATIONSHIPS
  高克勤(GAO, Ke-Qin)他
  熱河群産のコリストデラ類について概括しています。コリストデラ類は3つのグループに分か
 れます。大型で細長い吻部のもの(Ikechosaurusのようなシモエドサウルス科)、小型で吻部
 が短いもの(モンジュロスクス科)、とても小さい頚部の長いもの(Hyphalosaurusなど)。
 (※日本でも岐阜県高山市荘川からショウカワ イコイ が記載されていますね)
 熱河群産のコリストデラ類のデータを入れた系統分析では、モンジュロスクス科と頸が長いグ
 ループは新コリストデラ類の外に置かれ、このこと等から、熱河群コリストデラ類の放散が、
 白亜紀前期またはそれまでに起こったのだろうとし、熱河群の中でコリストデラ類は重要な構
 成要素だとしています。

鳥脚類恐竜の系統と進化史
  THE PHYLOGENY AND EVOLUTIONARY HISTORY OF THE ORNITHISCHIAN
  DINOSAURS BUTLER, Richard
  鳥脚類恐竜の世界的な系統について再吟味しています。9つの高次分類群および42の属
 レベルが選ばれテストされています。その結果、鳥脚類系統の全般的な構造は支持された
 が、いくつか異なったものがある。ヘテロドントサウルス科はゲナサウリア類と姉妹群をなし、
 おそらくもっとも基盤的な鳥脚類となる。ヒプシロフォドン科は強力な証拠により偽系統である
 ことが支持され、ジュラ紀中期のある分類群(Agilisaurus, ‘Yandusaurusmultidens) は、
 Cerapoda(周飾頭類+鳥脚類)の姉妹群となる。ゆえにこれまでの鳥脚類の概念は小型2足歩
 行分類群の多系統であったようだ。

植物食恐竜の摂食、栄養価と中生代の葉の消化率
  FEEDING DINOSAURIAN HERBIVORES: THE NUTRITIVE VALUE AND
  DIGESTIBILITY OF MESOZOIC FOLIAGE
  DECHERD, Sara,
  中生代のパラドックスの一つに、植物食恐竜は乏しい栄養価の裸子植物類を食べて、なぜ
 高代謝になり巨大化したかということがあります。発表者は、中生代の大気は現在よりCO2、
 O2が多く含まれていたという仮説に基づき、CO2が2,000ppm(現在の5.5倍)、O2が大気中に
 30%(現在の50%増)大気圧が1.25気圧の環境でイチョウの種苗を栽培しました。その結果、
 イチョウ葉の消化率はCO2の増加によりよくなった、栄養価は若干低くなったがO2が増加し
 た時には測定されなかった。ゆえに中生代の大気が想定されているようなものならば、植物
 はより成長し、消化率はより高く、栄養価は現在と同等だっただろう。そうならばこのパラドッ
 クスを解決するのかもとしています。

 
ティラノサウルス類の脳と耳の構造:個体成長と感覚機能および行動に対する関係
  TYRANNOSAUR BRAIN AND EAR STRUCTURE: ONTOGENYAND IMPLICATIONS
  FOR SENSORY FUNCTION AND BEHAVIOR
  WITMER, Lawrence他
  ティラノサウルス科の耳領域と脳のエンドキャスト(空間の鋳型)が脳函のCTスキャンと3D
 視覚化により研究された。AMNH 5029, AMNH 5117, FMNH PR 2081を含む成体・亜成体標
 本および議論のあるクリーブランドの幼体頭蓋CMNH 7541もスキャンされた。CMNH 7541は
 独自の分類群(Nanotyrannus) またはT-REX幼体とみなされている。クリーブランド頭蓋の脳
 函は他のより成長した標本と直接比較するためにデジタルに抽出された。全標本で脳函の含
 気は広範囲であり、後鼓室、底蝶形骨、下顆陥凹には明確な交通があった。含気特徴の大
 部分は中耳由来の憩室の含気化に帰せられる。しかし、いくつかは咽頭正中憩室、また他の
 ものは頚部気嚢と関連する肺組織に由来する。成体標本の脳のエンドキャストは、他の大型
 獣脚類のものと同様だった。しかし、クリーブランド頭蓋の脳はより丸く、成体で観察される硬
 膜松果峰はほとんど存在せず、脳組織あるいは少なくとも頭蓋腔組織の成長上の変化がか
 なり大きい可能性があることが示唆される。クリーブランド頭蓋の推定上の鼻甲介の識別に
 より、感覚上皮成分から神経成分(嗅球)の識別ができる;嗅覚器官はよく発達している。内
 耳の骨迷路は、他の非鳥コエルロサウルス類と同様組織化されているが、よく発達した前庭
 -眼球反射および視覚系に対する信頼性と一致する、著しく長い繊細な管がある。さらに、蝸
 牛管を蔵する組織は長く、聴覚的手がかりおよび、おそらく中耳インピーダンスにおける広範
 囲にわたる鼓室の含気効果により与えられる低周波数の強調までもの信頼性と一致する。
 迷管の方向に基づき清明(正常な意識状態)時の頭の方向が再現され、幼体の清明姿勢は
 強固に下に向かされる。

非鳥獣脚類の嗅覚の尺度としての嗅球のサイズ
  OLFACTORY BULB SIZE AS AN INDICATOR OF OLFACTORY ACUITY IN NONAVIAN THEROPODS
  THERRIEN, Francois
  
  脳の半球と比べた嗅球のサイズ(嗅覚比)は、嗅覚の鋭さの尺度(すなわち、様々なにおいを
 識別する能力)であると考えられる。嗅球のサイズは、鳥類および哺乳類では定量的に評価さ
 れている、一方、ただ制限され、しばしば定性的であるが、非鳥獣脚類に対するデータは報告
 されている。非鳥獣脚類の中で嗅覚比を比較するためには、これらの動物で嗅球の正確な位
 置を印付ける骨学上の相関物を確認することは、不可欠である。鳥類およびワニ類との比較か
 らは、非鳥獣脚類の嗅球が、これまで篩骨複合?または蝶篩骨とされた、正中隔により前方に
 バウンドしたくさび形の要素の中に位置していることが明らかにされる;この要素は、鳥類の中
 篩骨およびワニ類の軟骨質の上隔面と相同である。
 非鳥獣脚類で嗅球の位置を決定した後に、エンドキャスト(脳の鋳型)及び頭蓋腔の容積に基
 づいた嗅覚比が、いくつかの分類群について計算してあり、Crocodylus acutus (アメリカワニ)
 と比較された。Tyrannosaurus rexCarcharodontosaurus saharicusGiganotosaurus carolinii
 および Allosaurus fragilisでは、C.acutusより高い嗅覚比であり、後の分類群より高い嗅覚の
 鋭さを、示唆している。ドロマエオサウルス科のSaurornitholestes langstoni ではC.acutus
 同様の嗅覚比があり、同様の嗅覚の鋭さを示唆している。最後にトロオドン科の
 Troodon formosus
とオルニトミムス科のDromiceiomimus brevitertius では、C.acutusより低
 い嗅覚比であり、これらの獣脚類の中で低い嗅覚を示唆するとともに、これらの分類群が獲物
 の位置を特定し捕らえるために、主に視覚及び聴覚に頼っていたという、これまでの仮説を支
 持する。これまで見積もられたより低いのだが、Tyrannosaurus rex の嗅覚比は、
 GiganotosaurusおよびCarcharodontosaurusを含む他のいかなる研究された獣脚類分類群よ
 り高く、Tyrannosaurus rex の膨大した嗅球は、単に大きい体のサイズの相対的な結果ではな
 く、よりよく臭いを識別する適応の反映であることを示している。

アロサウルスの成長組織学
  ONTOGENETIC HISTOLOGY OF ALLOSAURUS (DINOSAURIA: THEROPODA):
  ASSESSING GROWTH TRAJECTORY AND EVOLUTION OF ONTOGENETIC LIMB ALLOMETRY
  LEE, Andrew
  Allosaurus は中生代獣脚類恐竜の中で最も一般的なものの一つである。個体成長を通した
 骨格材料の有効性は、他の獣脚類の状況内においてAllosaurus の成長力学を評価する素晴
 らしい機会を提供する。我々は、その成長軌跡および個体の手足の相対成長を評価して、組
 織学的な分析を提示する。上腕骨、尺骨、大腿骨及びfibrolamellar 骨の腓骨部の一連に成長
 したものに基づき、我々は13から19歳のサンプルのうち最大個体の年齢を見積もってみる。成
 長曲線を復元すると、最大の成長が14歳で起こったのを示すが、そのとき体重は130kg/年増
 加した。Allosaurus のより大きい骨に基づいて、我々は22-28歳の間の最高年齢の限界を見
 積もってみる。年齢は他の大型獣脚類の予備的データと同様である。Allosaurus の手足の成
 長は、完全に等しい大きさになるわけではない。上腕骨は大腿骨と等長的に長くなるが、尺骨
 と脛骨は等長性を示さない。系統最適化により、大型獣脚類は大腿骨に関して長さ方向の成
 長を系統的に縮減させたことにより、それぞれ独自に上腕骨、尺骨、脛骨を退縮させたことが
 示される。

中華人民共和国内蒙古自治区イレンダバス産のティラノサウルス上科の再検討
  A REAPPRAISAL OF TYRANNOSAUROIDS FROM IREN DABASU, INNER MONGOLIA,
  PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA CARR, Thomas他
  Alectrosaurus olseni レクトタイプ標本(AMNH 6554) の後肢は、他の全てのティラノサウル
 ス上科のものと著しく異なっている。しかし、大体同じエリア、イレンダバスから産出した、未記
 載だが砕けているティラノサウルス上科の頭蓋は、それほど独特なものではない。アメリカ自
 然史博物館の野外調査隊が1923年4月末に両標本を最終した。両標本は5日の間隔と異なっ
 た現場で発見された;それが同一個体に属する証拠はない。砕けた頭蓋は小型動物のもので
 あり、記載されてこなかった;その頭蓋には前上顎歯および外側歯、不完全な左涙骨、左頬骨
 の上顎突起、右方形頬骨の大部分、外翼状骨の頬骨突起、右翼状骨の方形突起が含まれて
 いる。頬骨の眼窩前窩にある副窩の存在から、この標本をティラノサウルス科に帰すことがで
 きる。涙骨の角突起は、いくつかのティラノサウルス上科幼体と同様であるが、それらでは、そ
 の突起は低く、外側に張り出した稜がある。外側歯は、ウズベキスタンのチューロニアンから産
 出したティラノサウルス上科の同じ基底歯冠長と同様に細かく鋸歯状になっている。
  AMNH 6554には、右後肢、左足の一部および恥骨の一部が含まれる。後肢と足には多くの
 記載形質がみられる。このうち最も特筆すべきものは、他のティラノサウルス科と対照的に、 
 中足骨と趾骨の大部分の関節面に見られる肥大状態、フィールドで関節したAlectrosaurus
 の足であると直ちに同定されうる状態である。現生鳥類で同様のpediculate状態がある
 のは、猛禽類および大型走鳥類であり、ティラノサウルス上科で推定される素早い捕食習性と
 一致する事である。しかしながら、Alectrosaurus のこの肥大した状態が、他のティラノサウル
 ス上科より、ある目的により効果的にかなうものだったかどうかは、今のところ不明である。

ニジェールのセノマニアン期産のカルカロドントサウルス(恐竜:獣脚類)新種およびアロサウ
 ルス上科系統に対するその意味
  A NEW SPECIES OF CARCHARODONTOSAURUS (DINOSAURIA: THEROPODA)FROM THE CENOMANIAN OF
   NIGER AND ITS IMPLICATIONS FOR ALLOSAUROID PHYLOGENY

  BRUSATTE, Stephen他
  アフリカで行われた直近のフィールドワークにより、白亜紀脊椎動物群記録の主要なギャップ
 が埋められ始めた。巨大なアロサウルス上科獣脚類、Carcharodontosaurus saharicus は現
 在、エジプトからモロッコまでのサハラ砂漠から産出した歯と頭蓋の骨により記載されている。
 ここに我々は、白亜紀後期のアフリカに1種以上のCarcharodontosaurus が存在したことを明
 らかにする。ニジェールのEchkar層(セノマニアン期)から産出した新しい種は、太い中心稜の
 ような他のいくつかの固有派生形質をはじめとして、派生形質である前眼窩窓の膨大した腹
 側縁の欠如がC. saharicusと、最も著しく異なる大きい上顎骨に基づく。材料は、完模式標本
 の現場の近くで発見され、関節した歯、よく保存された脳函及び歯骨前端が含まれ、一応新種
 とされた。脳函は、そのより細長く、外側に分岐した外側蝶形翼があり、これもエンドキャストの
 詳細同様C. saharicus と異なる。
  アロサウルス上科全般にわたり再検討された形質の証拠により、Carcharodontosaurus,
 Giganotosaurus, Acrocanthosaurus, Neovenator および新しい南アフリカ白亜紀後期産のカ
 ルカロドントサウルス科が単系統であることが証拠づけられる。このグループ中では、軸椎の
 含気が相当変化し、いくつかのメンバーでは、ティタノサウリア類竜脚類に匹敵する、よく発達
 したcamellate内部構造を示す。しかしながら、カルカロドントサウルス科とアベリサウルス上科
 には、数人の執筆者により提案されてきたような近縁関係を支持するものは、僅かしか認めら
 れない。カルカロドントサウルス科の外群となるいくつかのアロサウルス上科のジュラ紀の時
 代、また、ローラシアおよびゴンドワナ両大陸にそのメンバーが分布することから、カルカロドン
 トサウルス科の起源は、主要な大陸塊に歩いて渡れる接続があったジュラ紀前期より遅くない
 ことが示唆される。
 
 
非鳥獣脚類における性を反映していると称されている骨学的相関の有用性をテストする
  TESTING THE UTILITY OF OSTEOLOGICAL CORRELATES PURPORTED TO
  REFLECT GENDER IN NON-AVIAN DINOSAURS
  PRIETO-MARQUEZ他
  非鳥獣脚類の性は、性的ニ形性が推定される、骨盤と尾の骨格の性状を使用して推論され
 てきている。その理論では、メスのより幅広い骨盤管と、短い、より後ろに位置した第一血道
 弓が、総排泄腔を通る卵の通路を容易にする。対照的に、オスの長い、より前に位置した第一
 血道弓には、「ペニス後引」筋を十分付着させるエリアの余裕がある。アメリカのアリゲーター、
 Alligator mississippiensis は、これら性的表現型のモデル分類群として大体役立った。それに
 もかかわらず、本当にこれらの表現型が存在するのを示す、定量的なデータはまず提示されて
 いない。 ここで、我々は、本当に性の特定の形態学的な差がこれらの恐竜外群に存在してい
 るかどうかテストするのに、A.mississippiensisと鱗竜類のIguana iguanaの野生で捕獲された骨
 格を使用した。A.mississippiensis のメス17個体とオス19個体およびI. iguana のメス13個体と
 オス7個体からなる予備的サンプリングが調べられた。測定値には、骨盤管領域;骨盤管の背
 腹高および中心・外側幅;腸骨の背側端と坐骨の腹側端間の高さ;及び第一・第二血道弓の
 位置と高さが含まれる。さらに、形状解析の新しい方法(Geodesic Distance Analysis測地線解
 析)は、骨盤管の断面に形態学的な違いがないかどうかテストするのに使用された。ANCOVA
 は測定値およびGeodesic Distance Analysisからのデータ両方のを分析するのに使用された。
 性と骨盤の形態、血道弓の長さまたは位置の間にどんな重要な相関関係も見つけられなかっ
 た。骨盤と尾椎骨格の骨学的相違に基づき恐竜の性を評価することができるという主張は支
 持されなかった。

恐竜における性的ニ形?その証拠の再検討
  SEXUAL DIMORPHISM IN DINOSAURS?: A REVIEW OF THE EVIDENCE
  PADIAN, Kevin
  性的ニ形はほとんどあらゆるグループの恐竜で一度以上推論されてきた。しかしこれまで発
 表された論文におけるこれらの推論は、どれくらい確固たるものだろうか。多くの場合、資料の
 サイズは統計的な分離を可能にすることができないくらい小さい(例えば、pachycephalosaurs
 lambeosaurs、ほとんどの角竜類、ほとんどの獣脚類)。しばしば性的ニ形について疑われる要
 素は、分類群または骨学的年齢の独立した証拠を提供する他の骨格要素と十分関連づけられ
 ない(例えば、pachycephalosaurschasmosaurs)。骨学的バリエーションは、性的ニ形が援用
 された多くの場合を説明するかもしれない。これらのケースの大部分は角、フリル、および稜な
 どの「奇妙な構造」にかかわるが、いくつかの竜盤類では「頑丈」と「繊細」型が確認され、性的
 二形が関係した。我々は、これらのケースでは、統計的なサンプルが十分でないか、または
 「頑丈」型が単により成熟している個体であることが等しく可能であることを示す。このことは、恐
 竜における性的ニ形の可能性を排除しないが、一般的なパターンとしてはその可能性を弱める;
 DodsonのProtoceratopsの研究は統計的に有効なままで残るかもしれないが、彼が認めたよう
 に性的二形のシグナルは弱い。しかしながら、ダーウィンの理論の性的な選択に、本当の性的
 ニ形が必要である。そのような性的二形は化石記録に保存されない柔らかい部分や習性に存
 在したかもしれないが、現在保存されているものに基づけば、性的二形や性的な選択について
 のどんな強力な証拠もない。

カナダ北極圏産のプレシオサウルス(爬虫類:SAUROPTERYGIA):その系統及び生層序の予
  備的報告
  PLESIOSAURS (REPTILIA: SAUROPTERYGIA) FROM THE CANADIAN ARCTIC:
  A PRELIMINARY REPORT ON THEIR SYSTEMATICS AND BIOSTRATIGRAPHY
  佐藤たまき他
  本報告はカナダ自然博物館(CMN)所蔵の北極圏プレシオサウルス類標本群に関する進行中
 の研究に関する予備的報告である。この研究は、関連する分類群の解剖学的詳細をはじめ、
 極圏のプレシオサウルス類動物相の分布と分類群の多様性について新情報を加えることにな
 るだろう。CMNは1950年代以来、カナダ北極圏の様々な産地と層準から採集された多くのプレ
 シオサウルス類標本を所蔵している。高緯度帯における中生代海生爬虫類相の古生物学を理
 解するのに非常に重要であるにもかかわらず、それらの標本については、限られた情報しか出
 版されてこなかった。プレシオサウルス類の遺骸は、例えばアラスカ、グリーンランド及びスヴァ
 ルバードのような他の北極圏の地域から知られているが、その殆どは上部ジュラ系産である。
 本研究におけるCMN標本の層位学的分布は、中部ジュラ系(カロヴィアン階)から上部白亜系(カ
 ンパニアン〜マーストリヒティアン階)にわたる。
  CMNのジュラ系標本は、ウェスタンクイーンエリザベス諸島から知られるが、それにはメルヴィ
 ル島産出の部分的骨格も含まれる。それ頭蓋、下顎、前部頚椎及び前肢からなる若い個体で
 ある。頭蓋の一層の剖出により、口蓋骨、脳函および後眼窩桿の詳細が明らかになった。この
 標本は従来cryptoclididとして報告されたが、例えばヘラ形の下顎結合、前部翼状間空隙の
 欠如及びニ頭頸肋骨のような形質により、それが実際にはプリオサウルス類のSimolestes
 あることが示される。
  白亜紀前期の標本は稀で、ウェスタンクイーンエリザベス諸島のクリストファー層産出の数個
 の頭部より後ろの材料が知られるにすぎない。1960年代北西テリトリーのアンダーソン川流域
 で産のいくつかのエラスモサウルス科とポリコティルス科が記載され、1980年代以来、非常に
 多くの追加された白亜紀後期の材料が主に諸島から採集された。これら白亜紀後期の標本は
 しばしば風雨にひどくさらされ、またとても断片的なのだが、エラスモサウルス科の頚椎と肢帯
 骨が同定されている。

南極白亜紀後期産のプレシオサウルス類幼体及び関連する脊椎動物
  A JUVENILE PLESIOSAUR AND ASSOCIATED VERTEBRATES FROM THE
  LATE CRETACEOUS OF ANTARCTICA
  MARTIN, James他
  2005年1月から2月、米国科学基金とアルゼンチン南極研究所の協同野外遠征により、南極
 半島の白亜紀堆積から例外的な化石脊椎動物が産出した。ヴェガ島に露出しているマーストリ
 ヒティアン期の岩石から、標本はCape Lamb部層とSandwich Bluff部層で発見された。殆どの標
 本は海生爬虫類を表しているが、いくつかの化石が浅海環境に流された陸生生物を含んでいる。
 後者の中では、鳥類および断片的な恐竜の遺骸が確保された。鳥類は様々であり現生鳥類の
 目が表われているが、このことは、白亜紀末の絶滅の前に南極大陸が鳥類の進化のために重
 要な地域であったという仮説を支持している。海洋生物では、1匹のカグラザメ科と胃石が大
 きいプレシオサウルスの胴体材料と関連してあるのがわかった。恐らく最も壮観な発見の一つは
 プレシオサウルス幼体骨格の発見だったが、それは90%完全で、エラスモサウルス科を表してい
 る。全体的に見て、遠征は、中生代末の間の生物及び最南の大陸の環境に関する我々の知識
 を加えることに成功していた。

コロラド州西部モリソン層(上部ジュラ系)産出のMESADACTYLUS 及び他の翼竜標本
  MESADACTYLUS AND OTHER NEW PTEROSAUR SPECIMENS FROM THE
  MORRISON FORMATION (UPPER JURASSIC) OF WESTERN COLORADO
  KING, Lorin他
  最近採集された新しい標本は、Fruita近郊のKings View発掘地でプテロダクティルス上科
 Mesadactylus ornithosphyos 及びRabbit Valley と the Uravan Site のMygatt-Moore発掘地に
 おける不確定な翼竜、全てコロラド州西部だが、その存在を示した。Kings View発掘地からは、
 Camarasaurus幼体、Stegosaurus幼体、1本の獣脚類の歯、ワニ類の歯、Glyptopsの甲羅及び
 Opithiasの顎が産出している。また、そこからはプテロダクティルス上科の右橈骨、右第1翼指、
 肋骨(?)及び手(?)の指(第1、2又は3指節)。橈骨と第1翼指は、Dry Mesa発掘地産のMesadactylus
 ornithosphyosのものと一致し、その種に当てられる。このことは、Mesadactylusをその模式産地
 以外のサイトで同定された、最初のモリソン層の翼竜の属とする;他の全てのモリソン層の翼竜は
 単体産出である。Mygatt-Moore発掘地の翼竜標本は、何年にもわたるそのサイトでの初めての
 新種であり、その地域で発見されたごく少数の小型脊椎動物の一つであるが、そこからは長年に
 わたり、主にApatosaurusAllosaurusCamarasaurus、及びMymoorapeltaからなる数多くの骨を
 産出してきた。Mygatt-Moore発掘地は、明らかな氾濫原、泥/水穴を表し、この翼竜標本は単一
 の空洞の不確定な翼骨幹からなる。Uravan Siteの断片的な標本は、ランフォリンクス上科かもし
 れず、非常に断片的な骨からなるが、明らかに単一個体のものである。

ユタ州南部GRAND STAIRCASE-ESCALANTE NATIONAL MONUMENTの下部から中部カン
 パニアン WAHWEAP層産出の恐竜遺骸
  DINOSAUR REMAINS FROM THE LOWER TO MIDDLE CAMPANIAN WAHWEAP
  FORMATION AT GRAND STAIRCASE-ESCALANTE NATIONAL MONUMENT,SOUTHERN UTAH
  KIRKLAND, James他
  微小脊椎動物化石採集中に採集された歯化石に基づき、Wahweap層は、北米で最も多様性
 に富んだ下部から中部カンパニアンの恐竜相、歯に基づき9つの分類群を保存していることが
 注意されている。重要な骨格材料は、ごく最近研究に利用できるようになったが、南部
 Kaiparowits 高原にあるWahweap層の下部砂岩単層から中部泥岩単層中の化石帯の系統的
 目録?のためである。ケラトプス類頭蓋から、中位の大きさ(〜10m)の長い角をしたケントロサ
 ウルス亜科の存在が示される;これら頭蓋のうち最良の保存状態のものは、未だ奥地から空
 輸されるのを待っている。
 筆者らと共に研究しているユタ大学のチームは、中部砂岩単層からパキケファロサウルス類の
 前頭・頭頂骨ドームを採集した。移動により損耗しているが、幅狭い三角形の鼻骨buttressが
 ある点で独特なため、その標本は新種であるようだ。さらに、いくつかのハドロサウルス類の、
 ボーンベッド及び/または関連した骨格群が確認されている。これらWahweap化石現場の発掘
 は、今始まったばかりであり、これまでに1個の採集された標本が属レベルで同定されただけ
 である。これは、Brachylophosaurusと最も良く対比できる、完全な頬骨で、この中部カンパニ
 アンの属で最古かつ最南のものを表すだろう。 
 
  
カタストロフィーの影に:北米西部カンパニアン-マーストリヒシャンの恐竜の系統、古環境及
  び恐竜相の転換
  IN THE SHADOW OF CATASTROPHE: PHYLOGENY, PALEOECOLOGY, AND
  FAUNAL TURNOVER OF CAMPANO-MAASTRICHTIAN DINOSAURS OF WESTERN NORTH AMERICA
  HOLTZ, Thomas
  北米西部には中期カンパニアンからマーストリヒシャン末まで(Judithian, Edmontonian, 及び
  Lancian NALMAs)比類のない恐竜化石群集の連続がある。この連続は、非鳥恐竜の中で
 多様性と古環境の変化を認識するために最も良い可能性のあるケースを表す。しかしながら、
 これまでの研究は、K/T事変とは独立した恐竜史の変遷の可能な記録としてよりも、白亜紀
 末絶滅のに関して、これらの変化を調べてきた。恐竜相の多様性に関するこれまでの研究は、
 単に種の直接観察された記録に基づいていた。この分析は、問題となっている恐竜分類群の
 最近の系統分析により、幽霊系統の存在が認識されたことにより、観察された記録に加えら
 れる。いくつかのケースでは移住により研究領域への系統の突然の出現が合理的に推論さ
 れるかもしれないが、他のケース(特にケラトプス科全体及び他の主要分類群の特別なクレー
 ド)では、そのクレードの知られている記録は全て北米西部の中だけである。
  総合的な多様性はJudithianで最も高いが、ほとんどのクレードがLancianに存在して残って
 いる。多様性変化の最も注目に値するケースは最も多くのもっともらしいクレード、ハドロサウ
 ルス科及びケラトプス科に現れる。 これらの各々では、吻部がより長い分類群(長い吻部のハ
 ドロサウルス亜科及びカスモサウルス亜科)がLancianに優先的に生き残ったが、短い吻部の
 親類(短い吻部のハドロサウルス亜科、ランベオサウルス亜科及びケントロサウルス亜科)は
 マーストリヒシャンに向かって生存レートのかなりの減少を見せている。これら恐竜相の変化
 は、K/Tインパクトの何百万年も前に起こり、またデカントラップ火山活動開始のかなり前で、
 マーストリヒシャンRegression(海退?)開始の議論のある以前である。その上、それらは恐竜
 の中で特定のグループの絶滅を記録するが、関連する分類群は衰退に関するどんな信号も
 見せない。従って、「ゆるやかな絶滅」の何らかの態様を表すことの代わりに、これらの多様
 性の変化は北米西部の鳥脚類の中の相変遷を記録するように思える。観察と一致した一つ
 の可能なシナリオは、植物組成変化に対する、ある分類群の優先的生存だろうが、他のシナ
 リオを無視することはできない。