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デボン紀の四肢動物Ichthyostega(イクチオステガ)の体軸骨格 9.01.05
 The axial skeleton of the Devonian tetrapod Ichthyostega
 Per Erik Ahlberg, Jennifer A. Clack & Henning Blom
 ネイチャー9月1日号 pp.137-140 Vol 437|1 September 2005|doi:10.1038/nature03893

 Ichthyostega(イクチオステガ)は、陸上にあがった最古の四肢動物の一つと、言
 われています。その歩き方は、魚のように体軸を左右にくねらせるものとされて
 きました。
 この論文では、化石の分析をやり直し、その脊柱が左右にくねるのは無理がある
 ことを明らかにしました。神経弓が長すぎるからだそうです。
 Ahlberg達は、Ichthyostega が尺取虫のように後ろ足を前方に引き寄せては、前
 足を前に伸ばすことで体を前進させたかもしれないとしています。もしこのよう
 な陸上移動をしていたのなら、結局は陸上移動に成功せず、現生四肢動物に連な
 らない系統の動物だったのかもしれません。

 論文にある復元図を見ると、体長全体の中で頭部の占める大きさは従来より若干
 小さくなっています。従来の復元では頚椎から尾椎まで、ほぼ一様な長さおよび
 方向の神経弓になっていますが、新しい復元では神経弓全体が従来より長い中で、
 仙前椎部でいったん短くなり前方に傾斜し、4個の仙後椎では扇型の長い神経弓
 となり、再び後方にだんだん向いています。肋骨も従来は一定の割合で後方に短
 くなりますが、新しい復元では腰部から仙前椎部にかけて急に短かくなります。
 また、かなり深く重なり合っているので、胸部で左右・腹背方向に屈曲するのは
 恐らく無理でした。四肢については、肢帯は従来より大きくなっています。従来
 まがりなりにも四肢を立たせていたのに対し、新しい復元では後肢は後方に曲が
 り、引きずられているという印象になっています。また尾椎は従来の復元より若
 干短くなっています。

 アブストラクトほにゃ訳
  Ichthyostega は、体全体の復元がされた、最初のデボン紀四肢動物である。そ
 れは、Acanthostega とともに、頭部より後方の、ほとんどの材料が利用できる、
 ただ2つのデボン紀四肢動物のうちの1つである。したがって、それは最初期の四肢
 動物の進化と陸上進出に関して我々が理解するために、きわめて重要なものである。
 ここに我々は、元々の標本の再検討および最近採集された標本に基づいた、
 Ichthyostega の新しい復元を提示する。我々の復元は、これまで出版されたもの
 と本質的に異なっており、脊柱にこれまで認識されていない領域化があったことを
 明らかにする。Ichthyostega は、非遊泳型移動に明らかに適応したことを示す最
 初期の脊椎動物である。初期四肢動物の中で独特なことは、仙前椎柱に神経弓形態
 の著しい領域化が見られることであり、外側方向より腹背方向の屈曲に適応してい
 たことを示唆している。

 LiveScience ナショナルジオグラフィック