パタゴニアジュラ紀後期産短い頚部の竜脚類の発見 6.02.05
Discovery of a short-necked sauropod dinosaur from the Late Jurassic
period of Patagonia
Oliver W. M. Rauhut, Kristian Remes, Regina Fechner, Gerardo Cladera and
Pablo Puerta
ネイチャー6月2日号 Nature 435, 670-672 (2
June 2005) | doi: 10.1038/nature03623
"クビの短い竜脚類"こう書いただけで、自己矛盾しているという感じさえします。
ところが、本当にこんな竜脚類が発見されました。推定体長は約10mという比較
的小型の竜脚類です。
アブストラクト
竜脚類恐竜は、誰でも恐竜というと思い浮かべられる典型的な中生代陸生脊椎動
物の分類群である。この仲間にはサイズの増大と頚部の伸長という一般的な傾向
が見られる。伸長は個々の椎骨の伸長及び頚椎の数の増加という手段によってお
り、場合により19まで増加している。長い頚部は竜脚類の顕著な特徴であり、通
常、重要な菜食適応とされている。ここに我々は、パタゴニアジュラ紀晩期産の
新しいディクラエオサウルス科を記載するが、それは頚部が著しく短いものであ
る。頚部は他の既知のディクラエオサウルス科より40%短いが、この分類群は殆
どの竜脚類に見られるの逆の傾向があり、さらに、ディクラエオサウルス科の生
態は他の竜脚類とかなり異なっていたかもしれないことを示す。この新分類群は、
ジュラ紀中期後半までに起こった北半球の大陸とゴンドワナ大陸の分離後、南半
球のジュラ紀後期にディクラエオサウルス科の急速な放散および分散があったこ
とを示す。
Brachytrachelopan mesai gen. et sp. nov.
属名はBravhitrachelos(ギリシャ語で短いクビをした)+Pan(ギリシャ神話の牧神
Daniel Mesa が迷った羊を探している時に発見したことから。
種小名は発見者Daniel Mesa に献名。
完模式標本:Egidio Feruglio 古生物学博物館 MPEF-PV1716 以下を含む関節し
た骨格(8個の頚椎、12個の胴椎、3個の尾椎、後部頚肋骨近位及び全ての胴肋骨、
右腸骨、左大腿骨遠位部及び左脛骨近位端。
産地と層準:上部ジュラ系(Tithonian)Cañadón Cálcareo 層の河成砂岩層
Cerro Cóndor村から北東約25kmにある丘陵の頂上
分類基準:Brachytrachelopan mesai は他の全ての竜脚類とその非常に短い頚
部が異なっている、個々の頚椎は前後長が椎骨前部の高さと同じかそれより短い。
この分類群のさらにある派生形質には、頚椎骨にある、著しい、柱のような中心
後関節突起板centropostzygapophyseal lamina 、中部頚椎神経棘の著しい前方
傾斜、及び前部胴椎神経棘1-6には垂直な基部と前方に屈曲した先端がある。
系統分析ではBrachytrachelopan はアルゼンチン産のAmargasaurusよりもアフ
リカ産のDicraeosaurus に最も近縁とされ、このことからジュラ紀中期後半まで
に起こった北半球の大陸とゴンドワナ大陸の分離後、南半球のジュラ紀後期に、
ディクラエオサウルス科の急速な放散及び分散があったことを示すとしています。
その頚部の短さについて、他の竜脚類では頚椎長は胴椎長の最大400%に達するが
Brachytrachelopan では胴椎長の75%しかない、またDicraeosaurus では123%、
Amargasaurus では126%である。長い頚部はディクラエオサウルス科では最も基
盤にあるAmargasaurus に見られることから、ディクラエオサウルス科では頚部
が短くなる傾向があるように見える。長い頚部は竜脚類の採食行動の著しい適応
の一つとされるので、比較的短く柔軟性のある頚部は、竜脚類の中でニッチェの
分割に重要であったように見える。故に頚部が短くなる傾向は、Amargasaurusや
Dicraeosaurusで示唆されたように、低い位置での、特定の食物の採食に適応し
たのかもしれないとしています。
Brachytrachelopan は北半球のイグアノドン類のような生態的地位を占め、高さ
1-2mの植物を食べていたのだろうとしています。
朝日新聞 読売新聞 毎日新聞
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