パタゴニア産の、大型の歯をしたケラトサウルス類、GENYODECTES SERUS の出所
および解剖学 1.04.05
PROVENANCE AND ANATOMY OF GENYODECTES SERUS, A LARGE-TOOTHED CERATOSAUR
(DINOSAURIA: THEROPODA) FROM PATAGONIA
OLIVER W. M. RAUHUT Journal of Vertebrate Paleontology 24(4):894–902, December 2004
Genyodectes serus は、1901年に南米で初めて、疑問の余地のない非鳥獣脚類と
して記載された恐竜ですが、その地理的・層位学的出所はよくわからず、系統上
の位置づけも不明確でした。本論文では、出所を推定るとともに、ラプラタ博物
館に展示されていた完模式標本(MLP26-39)再剖出し、母岩の中に埋まっていた顎
の内側の情報も含めて再記載し、系統上の位置を議論したものです。
A. S. Woodward による原記載論文には、この標本が地理的・層位学的にどこから
産出したのか詳細には書かれていないようです。“Chubut州、Canadon Grande の
赤色砂岩”と記された所が実際にどこのどんな地層なのか検討しています。その後
Hueneが記した説明の当否や、この地域に分布する中生代地層露頭などから、Chubut
層群のCerro Barcino層(Aptian-Albian)下部からこの標本が産出したのだろうとし
ています。
Genyodectes serus の系統および分類上の位置づけについては、完模式標本が吻
部のみの断片的なものだったので、メガロサウルス科、ティラノサウルス科、ア
ベリサウルス科という説がこれまで出されてきました。
本論文の古生物学的記載はケラトサウルス科?としています。ただし、ここでは
アベリサウルス科よりCeratosaurus に近縁な全てのケラトサウルス類を含むク
レードとして用いています。
分類基準として、Ceratosaurus を除くと考えられるが、全ての獣脚類と、重なり
あった梯状パターンをした前上顎歯。最長の上顎歯冠の歯根尖長は上顎の最小腹
背長より長いこと。 前上顎歯の数がCeratosaurus では3本なのに対し4本である
こと。以上をあげています。
さらに、癒合した歯間板の結合、鋸歯のある切縁に隣接して、明らかに平面又は
むしろわずかに凹面になっている部分がある前上顎歯および上顎歯、上顎歯より
かなり短い前上顎歯、強度に扁平し非常に長い上顎歯から、ネオケラトサウルス
類であること、特にケラトサウルス科に近縁なことが示され、南米で白亜紀前期
のこの年代にネオケラトサウルス類が既に様々に分岐していたことが示唆される
としています。