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アルゼンチン、ネウケン州下部白亜系のレバッキサウルス科竜脚類 12.29.04
 LOWER CRETACEOUS REBBACHISAURID SAUROPODS FROM CERRO AGUADA DEL LEON
 (LOHAN CURA FORMATION), NEUQUEN PROVINCE, NORTHWESTERN PATAGONIA, ARGENTINA
 LEONARDO SALGADO, ALBERTO GARRIDO, SERGIO E. COCCA and JUAN R. COCCA
 Journal of Vertebrate Paleontology 24(4):903–912, December 2004

 アルゼンチン、ネウケン州南東部、Cerro Aguada del LeonのLohan Cura層(Aptian-
 Albian)から産出した少なくとも3個体分の関節しない骨格断片により、レバッキサウ
 ルス科の新属LIMAYSAURUSが記載されています。その地域の主要水系Limay川にちなん
 だ名です。
  属の模式種は、これまでRebbachisaurus tessonei Calvo and Salgado,1995
 (holotype: MUCPv-205) とされていたものです。後期白亜紀(Cenomanian)モロッコ
 産のRebbachisaurus garasbae とは属レベルの違いがあるとされました。これは当初
 Rebbachisaurus属の固有派生形質とされていた形質が、他のレバッキサウルス科にも
 あることがわかり、両者が他のレバッキサウルス科と比べ特に近い間柄にあるとは言
 えなくなったためです。また“RebbachisaurustessoneiRayososaurus 属にする
 ことも否定され、新属Limaysaurus が提案されました。したがって“Rebbachisaurus
 tessonei は、Limaysaurus tessonei になります。これにともない、Limaysaurus
 Rebbachisaurus 両属の分類基準が定義されています。

  本論文の後段では、Limaysaurus とされる他の材料について記載しています。これが
 少なくとも3個体分とされるものです。歯、各部の脊椎骨やその断片、烏口骨、上腕骨、
 腸骨の寛骨臼部、恥骨、坐骨近位、大腿骨、右脛骨、左腓骨です。

  議論では、Wilson (2002)の分析を元にLimaysaurus およびAmazonsaurus(Carvalho
 et al., 2003)のデータを加え、ディプロドクス上科の系統分析を行っています。
 その結果、LimaysaurusNigersaurusおよびRebbachisaurusでレバッキサウルス科を
 構成し、Amazonsaurus はディクラエオサウルス科+ディプロドクス科の姉妹群とされ
 ています。

  Cenomanian中期までにディプロドクス上科は世界的に絶滅しますが、これは派生した
 ティタノサウリア類の増大分散によりとってかわられたためかもしれません。
 パタゴニア北部Aptian-Albianの期間、レバッキサウルス科とティタノサウリア類は
 共存しています。これは分化したニッチの違いによるかもしれません。Lohan Cura層
 から発見されたティタノサウリア類新属(Bonaparte私信)は極度に長い前肢があります
 が、Limaysaurus の上腕骨は、他のディプロドクス上科同様、大腿骨よりはるかに短い
 ものです。四肢のプロポーションの相違は食性の違いをあらわすものかもしれない。
 ディプロドクス上科の歯が円筒形をしているのに対し、下部および「中部」白亜系から
 発見されるティタノサウルス形類の歯が比較的幅広い形をしている。ディプロドクス
 上科絶滅後に円筒形の歯をしたティタノサウルス類が拡散するのは、被子植物の増殖の
 結果によるものだろう。しかしこの仮説は、ティタノサウルス類の食性について直接証
 拠で裏づけを要するとしています。