日本恐竜探検隊 11.25.04
岩波ジュニア新書485 ISBN4-00-500485-7
真鍋真・小林欣次 編著 208ページ 税込819円(本体780円)
ジュニア新書は読者層を中・高校生にしていると推察されます。
しかし、この本は決して青少年向けにやさしくしたものではありません。
日本の恐竜について、発掘・クリーニング・研究・記載を行ってきた第一
線の研究者たちが、がっぷり取り組んだ労作です。
「恐竜とはなんだろう」にはじまり、サハリンのニッポノサウルスから御船層
群の恐竜まで、それぞれ研究し記載してきた方々が、簡潔に紹介していま
す。ただ読むと、ほんの一・二行で触れられていることも、それを検証する
ためにどういうことが必要だったか、できれば読み取ってみてください。
青少年にとって本当の良書は、大人にとっても真の良書です。「ジュニア」
という冠に惑わされず、子どもから老人まで手にとっていただきたい。
日本の恐竜研究のこれまで・現状・これからについて、これほど程よくまと
まった本は、ほかに知りません。
データもごく最新のものを用いています。例えば、恐竜の骨の名称を説明
する、北村雄一氏作の図は、10月7日にネイチャーで発表されたばかりの
Dilong(ディロング)を元にしています。地質年代表は、もちろんICS2004に
よっています。ですからマーストリヒチアン末は6550万年前です。
用語には専門的なものが含まれているところもあります。でもパンテオンを
見る方なら、ネットで検索すればほぼわかるでしょう。
研究の苦労、面白さ、情熱。
この本を読んだ中・高校生の中から将来の恐竜研究者が出るのではない
か。そんな予感さえいだかせる本です。