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中国産の基盤的ティラノサウルス類およびティラノサウルス類における
  原羽毛の証拠 10.07.04
  Basal tyrannosauroids from China and evidence for protofeathers in tyrannosauroids
  XING XU(徐星), MARK A. NORELL, XUEWEN KUANG, XIAOLIN WANG(汪筱林), QI ZHAO & CHENGKAI JIA
  ネイチャー10月7日号 Nature 431, 680 - 684 (07 October 2004);

  中国遼寧省北票市陸家屯の義県層(白亜紀前期 129-138百万年前)から産出した、
 ほとんど完全な頭蓋など(IVPP V14243 Holotype V14242,TNP01009,IVPP V11579)
 に基づき記載されています。
 ティラノサウルス類(Tyrannosauroidea)の新属新種として
 Dilong paradoxus gen. et sp. nov. と命名されています。
 属名は帝(Di)竜(long)、種小名はこの恐竜の驚くべき特徴から(朝日新聞の報道
 では、大型恐竜のイメージとは逆説的に小型であるから)。

 他のティラノサウルス類と識別する分類基準として、上顎骨上の前眼窩孔に対し
 背側に2つの含気陥凹があること、鼻骨と涙骨で形成されるY形の稜があること、
 方形骨の上顎骨関節に接近するほど伸びる、鱗状骨の極度に長い下降突起がある
 こと、底隆起に対し前方に底蝶形骨の背側突起があること、頚椎骨に非常に深い
 半円形の棘間靱帯窩があること、遠位端が幅広い頑丈な肩甲骨(肩甲骨の遠位は近
 位の2倍の幅)および、肥大した烏口骨(背腹長は肩甲骨長の約70%)が挙げられてい
 ます。

 頭蓋以外のその他の特徴には、前肢の指は3本であり、3本目の指も特に退縮して
 いないこと、中足骨はアークトメタタルサル状でないことなどもあります。

 小型で華奢な恐竜(最大の標本IVPP V14243で推定体長1.6m)ですが、ティラノサウ
 ルス類で最も早期のものであることは疑い無いとしています。その形質は、派生
 したティラノサウルス類に見られる頭蓋構造と、より基盤的なコエルロサウルス
 類と同様な、頭蓋より後部の原始的な骨格とのモザイクになっています。ティラ
 ノサウルス類と比較して頭蓋形質の80%を共有するのに対し頭蓋より後方では25%
 が共有派生形質であるため、ティラノサウルス類の進化においては頭蓋の変化が
 頭蓋より後方の変化より早期に起こったとしています。
 
 その標本の1つ(IVPP V11579 これは北票市張家溝(Zhangjiagou)で産出し、125百
 万年前の義県層とされています。この標本をさらに研究するとこれは同属の別種
 であるかもしれない)には、下顎と尾の先端周辺に、Sinosauropteryx にあるのと
 同様な繊維状構造物があります。尾椎骨に対し約30-45度の角度で20mm以上の長さ
 で。また左下顎骨の後方に接近して小斑状に保存されています。枝分かれはして
 いますが、そのパターンは識別困難です。

 これは、ティラノサウルス類に原羽毛があった最初の直接証拠となっています。
 一方、派生した大型ティラノサウルス類に鱗状の皮膚があった報告もあります。
 ここでは、鳥類のように体の部位により原羽毛と鱗の両方があったのではないか
 という考えが示されています。また別の考え方としてゾウが成体になるにつれ体
 毛を失うのと同様に、成体になると原羽毛を失うというということも示されてい
 ます。この場合、原羽毛の元々の機能は体温調節と関連していたという仮説を支
 持するものとしています。
 朝日 毎日 読売 
 ネイチャーニュース ニューサイエンティスト 中国恐竜網(図版あり)