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極度に長い首の三畳紀水生プロトロサウルス類 9.28.04
 A Triassic Aquatic Protorosaur with an Extremely Long Neck
 Chun Li(李淳), Olivier Rieppel, Michael C. LaBarbera
 サイエンス9月24日号 Science, Vol 305, Issue 5692, pp.1931 , 24 September 2004

 プロトロサウルス類と言われると、どういうものか思い浮かばないかもしれません。
 でも、オーダーを1ランク下げてタニストロフェウス科と言えば、きっと、あのクビ
 の長いおかしな爬虫類の仲間か!と思い当たるのではないでしょうか。

 今回サイエンスに掲載された標本は、頭蓋および頚椎骨の一部のみにより、地質学報
 2003年第4号で記載され、タニストロフェウス科の新属新種として
 Dinocephalosaurus orientallis と命名されています。東洋の恐ろしい頭のトカゲと
 いう意味でしょう。頭蓋の印象に基づいています。IVPP V13767
 貴州省盤県Xinmin(新民?)の関嶺層((Guanling Fm.) Anisian 約2億3千万年前)で発見
 されたものです。地質学報では、中国中期三畳紀で初めてのプロトロサウリア類であり、
 ヨーロッパ以外で初めてのタニストロフェウス科としています。

 今回のサイエンスの短報では、地質学報で記載された部分より後ろの頚椎骨および後肢
 まで紹介されています。尾部は残っていません。IVPP V13898
 頚部の長さは約1.7m、一方胴部長は1m未満です。その四肢は完全な水生であったことを
 示し、他の水生四肢動物がそうであるように、成体であるにもかかわらず多くの幼体の
 特徴を有するそうです。

 Dinocephalosaurus の頚部には25個の長く伸びた頚椎骨があります。その長さは胴椎骨
 の2.75倍にもなります(一方、Tanysutropheus(タニストロフェウス)の頚椎骨は12個で、
 その長さは胴椎骨の7から8倍になります)。また、頚椎には頚肋骨が平行に伸び、頚椎骨
 が前方から後方にいくに従い短くなっていくのに対し、頚肋骨は後ろのものほど長く伸び
 て、頚椎骨をつなぐブリッジの役を果たしています。この両者はクビを長く伸ばすために
 異なった戦略をとったといえます。Tanysutropheus はキリン型で、それほど多くない頚
 椎骨の1個づつを長くしたのに対し、Dinocephalosaurus はプレシオサウルス型で、あま
 り長くない頚椎骨の数を増やしていったのです。

 この長いクビについて、Dinocephalosaurus はおそらく頭を垂直方向に上げることはでき
 なかったとしています。呼吸するためには水面近くに浮上し、頭を水面にほぼ水平に出す
 形になり、その姿勢はこの動物の体長を長くする方向に働き、また移動時に波を誘発する
 抵抗を減少させるようになったとしています。

 細長いクビはがっしりした胴体よりかなり前方に頭を位置させることになり、濁った水の
 中で胴体がはっきりする前に獲物に近づくことができたとしています。さらに、クビの筋
 肉を使って、獲物を襲う前に頸肋を外側に広げることにより、頭を前方に突き出す時に、
 水中で自らがつくり出す圧力波を飲み込むことができたとしています。

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