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Acta Palaeontologica Polonica 49 (3), 2004 7.26.04
  New Early Cretaceous spalacotheriid “symmetrodont” mammal from Japan
  鍔本武久, GUILLERMO W. ROUGIER, 伊左治鎮司, 真鍋真, and ANALIA M. FORASIEPI

  福井県勝山の北谷層上部で発見された基盤的哺乳類、"相称歯類"、
 スパラコテリウム科の新属新種 Symmetrolestes parvus gen. et sp. nov. を
 記載しています。

 私は哺乳類については、ろくに知らない恐竜よりはるかに何も知らないので、
 ほとんど紹介できないのですが・・・

 "相称歯類"は、中生代の基盤的哺乳類で、その臼歯は咬合面から見ると、
 3つの咬頭が三角形をなし、中央の最大の咬頭を中心に前後にほぼ線対象に
 なっている特徴があります。
 一方、それより進化した汎獣類では、下臼歯の3つの咬頭の後ろに1つ咬頭が
 加わり、間に囲まれたくぼみができ、臼の役目をするようになりました(タロニッ
 ド)。また、上臼歯に新しく加わった咬頭が杵の役目をするようになりました。
 しかし、"相称歯類"ではタロニッドは未発達なのだそうです。

 "相称歯類"は三畳紀末から白亜紀にかけて北米、南米、ヨーロッパ、アジア
 から発見されています。ただし、その単系統が疑われてもいるようで、この論
 文では""つきで用いられています。

 その中でスパラコテリウム科は、下部白亜系西ヨーロッパ、白亜紀北米で発見
 され、その起源も西ヨーロッパと考えられています。今回記載された化石は、
 日本で初めて発見された"相称歯類"であるとともに、世界で2番目に古いスパ
 ラコテリウム科となっています。中国やモンゴルで発見されている標本とともに
 スパラコテリウム科の起源は東アジアにあった、あるいは初期進化は東アジア
 を舞台にしていたことが伺われるものです。

 記載された標本は、杉山川の渓谷で採集された岩のブロックから発見されたも
 のです。脊椎骨らしき断片、卵殻断片、イグアノドン科の歯が共産しています。
 右下顎断片で、2つの小部分からなります。
 第一切歯、および少なくとも4本の前臼歯形と5本の臼歯形の歯からなっていま
 す。他のスパラコテリウム科に比べ、臼歯形の歯の数が少なく、前臼歯形の歯
 の数が多い、また前臼歯形から臼歯形への移行が緩やかな点が異なるとしてい
 ます。
 
 参考:Mammaliformes: Symmetrodonta 哺乳類の分類
    MESOZOIC MAMMALS; Tinodontidae and Spalacotheriidae, an internet directory: