遼寧省西部白亜紀前期義県層産出の新ドロマエオサウルス類 5.18.04
A NEW DROMAEOSAUR (DENOSAURIA: THEROPODA) FROM THE EARLY CRETACEOUS YXIAN
FORMATION OF WESTERN LIAONING
遼寧西部早白亜世義県組一新馳竜類
徐星 汪筱林 古脊椎動物学報第42巻第2期 pp.111-119
義県層最下部の陸家屯層から産出したドロマエオサウルス科の新属新種の記載です。
その上下の層の年代は128百万年と139百万年だそうです。これまで最も早期のドロ
マエオサウルス科とされるSinornithosaurus millenii の年代が125百万年前であ
るため、本標本はドロマエオサウルス科で最も早期の属種であると言えます。
Graciliraptor lujiatunensis gen. et sp. nov. (陸家屯繊細盗竜)と命名。
属名は、その細い肢と尾から(gracilis,ラテン語で細い)+raptor
種小名は、完模式標本発見近くの村、陸家屯(Lujiatun)から
完模式標本IVPP V13474 は、数本の歯がある部分的な上顎骨、数個の尾椎骨、殆ど
完全な前肢および部分的な後肢からなります。
産地と層準 遼寧省北票市陸家屯 義県層最下部
分類基準 Graciliraptor lujiatunensis は、他の既知のドロマエオサウルス科と
以下の派生形質で区別されるとしています:中部尾椎の後関節突起につながる薄層
構造;非常に長く細い中部尾椎;手の第一指末節骨は第二指末節骨より非常に小さ
い;第三中手骨の近位端は非常に膨大している;非常に細い脛足根骨;脛足根骨の
近位骨幹断面は方形;距骨内側顆は後方に明確に膨大している;第二中足骨の遠端
は、他の中足骨より広がっている;および長く細い足第三趾第一指節骨
系統分析から、Graciliraptor lujiatunensis は他のドロマエオサウルス科より、
遼寧省産出のドロマエオサウルス科(Sinornithosaurus および microraptor) に近
縁であり、他のドロマエオサウルス科分類群と姉妹群となる単系統群をなすとして
います。
Graciliraptor lujiatunensis には、基盤的鳥類と同様ないくつかの形質(例:明確
に細長い尾椎骨;半月状手根骨は小さく、主に第二中手骨と関節する;手第一指は
短い)があり、鳥類とドロマエオサウルス科の近縁関係をさらに証拠づけるとしてい
ます。一方、尾椎にはトロオドン科と共通ないくつかの形質があるそうです。
この発見により、白亜紀前期熱河群のドロマエオサウルス科が高度に分化したことが
判り、他の証拠とあわせ、ドロマエオサウルス科がその進化の初期において、分類的
には急速に分化したが、形態的にはトロオドン科と対照的に比較的安定していたこと
が推測されるとしています。