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パキケファロサウルス類(pachycephalosaurs:鳥盤類:周飾頭類)の頭部組織学から
 その一時的構造と頭突き行動が矛盾することが明らかに 5.5.04
 Cranial histology of pachycephalosaurs (Ornithischia: Marginocephalia)
 reveals transitory structures inconsistent with head-butting behavior
 Mark B. Goodwin and John R. Horner
 Paleobiology, 30(2), 2004, pp. 253-67

 パキケファロサウルスの仲間といえば、その分厚いドーム状の頭蓋が特徴的です。
 頭突きをしている絵を誰でも見たことがあるでしょう。この頃では、正面切って頭突
 きをするには頚部の構造が弱いため、側面から相手の胴体を押すような解釈がされて
 います。また、このドームの血管分布状況から、体温調節の役割もしていたという説
 も立てられています。
 
 この論文では、パキケファロサウルス科の恐竜7つのドーム部から薄片をつくり、組
 織内部構造を調べています。その結果、前頭骨と頭頂骨が癒合して形成しているドー
 ム内部は3層構造になっていることがわかりました。内側からZoneI,II,IIIと名づけ
 ています。

 ZoneIは、軟骨起源に典型的な構造をもちで、その厚みはドーム全体の高さによらず
 一定です。ZoneIIは、血管が豊富に分布し、従来、衝撃を分散するスポンジ状構造に
 なっていると言われていました。ZoneIIIは、外側の比較的稠密な層で、血管分布は
 少なくなります。

 標本は、ドームを構成する骨の厚みと長さにより、その成長段階を幼体から成体まで
 区分してあります。すると、ZoneIIは成長して成体になると縮小していることが判明
 しました。これは頭蓋が十分成長する前の一時的な状態であるとしています。結局、
 ZoneIIIは、恐竜が生きている間中、厚みを増していくとしています。

 ドームの成長により変わる組織構造、特にZoneIIが成長に従い減少することがもたら
 す結論として、Goodwinらは頭突き行動も体温調節機能も否定しています。ドームや
 それに付随する角などは、種を認識するためのものだったとしています。また、眼で
 ドームを見て認識するシステムを敷衍すれば、ドームには色がついていたり、季節に
 より色が変わったかもしれないといいます。

 ドームの形による性的二形について、彼らは、それは成長段階による違いで、これまで
 その証拠とされたStegocerasのものは、幼体と亜成体であり、もし性的二形があったと
 しても、それは二次的なものであるとしています。成体の頭蓋についても、その組織内
 部構造を調査し、再吟味すべきであるとしています。