ダーウィンフィンチの30年間の観察における予測できない進化 4.26.02
  "フィンチの嘴"といえば、その本をお読みになった方もいらっしゃるでしょう。
 サイエンス4月26日号掲載 Science 2002 296: pp.707-711
 Unpredictable Evolution in a 30-Year Study of Darwin's Finches.
 Peter R. Grant and B. Rosemary Grant
 ガラパゴス諸島のダフネ島での2種のフィンチについて1972年から2001年ま
 で観察した結果です。地面にいるフィンチ(Geospiza fortis)とサボテンフィンチ
 (G.scandens)です。

 地面にいるフィンチは多年草の小さい種を食べるのに適した鈍い嘴をしていま
 すが、大きめの個体はcaltropという、より大きい種を食べることもできます。
 1977年にはラニャーニャに関連した旱魃が多年草を枯らし、地面フィンチの大
 部分も死んだが、より大きい種を食べることのできる個体は生き残り、数世代
 のうちに嘴は4%大きくなったそうです。しかし、その後エルニーニョの影響で
 雨がたくさん降るようになると、草の種も増え、それを食べるのに適応して、
 嘴は2.5%小さくなったそうです。
 
 サボテンフィンチはサボテンを食べるのに適した鋭い嘴をしています。しかし
 1983年のエルニーニョによりサボテンを水に浸したとき、わずかに鈍い嘴の
 サボテンフィンチは他の草の種を食べることができました。しかしエルニーニョ
 の影響が去ってもサボテンフィンチの嘴は鈍くなる傾向があります。これは、
 エルニーニョの影響でエサが少なかったときに、大型のオスがメスをわずかに
 残った果実から追い払ったため、メスが飢えて、残されたメス1羽に対しオス
 5羽という状況になったそうです。そのため一部のメスに恵まれないサボテン
 フィンチのオスが地面フィンチと交雑し、繁殖力のある子が生まれますが、
 その子はサボテンフィンチの父親の歌を刷り込まれているので、サボテンフィ
 ンチと交雑し、結果として地面フィンチの遺伝子がサボテンフィンチの嘴を形
 成しているためだそうです。

 このような結果、進化は短期間では予測できるが、長期には予測できないと
 しているそうです。
 参考:フィンチの嘴 ハヤカワ文庫