ティラノサウルスは速く走れなかった  2.28.02
  ネイチャー2月28日号掲載 415, 1018-1021(2002)
  JOHN R. HUTCHINSON AND MARIANO GARCIA
  ティラノサウルスが速く走れたのか、歩くだけだったのか、それはハンター・
 スカベンジャー両説とも関連して割とポピュラーな争点です。
 これまで、大腿骨と脛骨の長さの比など骨そのものからの研究がありました。
 連続した足跡が残っていると速度を計算できるのですが、ティラノサウルスの
 足跡は1個しか発見されていません。

  今回の研究は、速く走るのに必要な伸筋の最小重量を算定することで、走行
 能力を評価する方法を示しています。この方法はワニとニワトリに対し行われ、
 予測は実際の結果とよく合ったそうです。ちなみにワニが速く走るためには伸
 筋の最小重量は7.7%必要ですが実際には3.6%しかないの、一方ニワトリは、
 速く走るためには4.7%の伸筋が必要ですが、実際には8.8%ついている、だから
 走るのは得意なのですね。

 小型恐竜にこの方法を適用すると、速く走る能力をもっていた可能性が示され
 ました。一方ティラノサウルスでは仮定条件を緩めても、速く走るために必要な
 伸筋が脚1本あたり、体総重量の43%というとてつもない量になり、とてもありえ
 ません。ちなみにティラノサウルスサイズのニワトリを仮定すると、脚1本あたり
 体総重量の99%の伸筋が必要になるそうです。

 研究者たちは、ティラノサウルスや大型恐竜(-6,000kg)が走ることができたとは
 考えにくい、結論づけています。

 ティラノサウルスが高速で「歩いた」場合、理論上見積もられる最高速度は時速
 約18kmであるが、それでも発見されている大型獣脚類の足跡から算定される
 スピードより速いとしています。走った場合でも最高40kmとされています。
 まして、いくつかの研究の結果、時速72kmとされるが、それは生体力学的に
 無理としています。(このあたりについて、"論文で何を言っていないのか"、
 コーネル大ネイチャー関連ページで確認してみてください。)

 しかし、それはティラノサウルスがたとえばトリケラトプスを襲うことはできなかっ
 たということではありません。
 科博の真鍋先生は「獲物となった草食恐竜はもっと足が遅かったのでエサには
 困らなかったのではないか」とコメントしています。

 コーネル大ネイチャー関連ページ(解説やルイス・レイのイラストなど)
 ヤフーニュース(AP) BBC NSNBC ネイチャーサイエンスアップデート
 ヤフーニュース(毎日) 朝日新聞 ユーレカアラート
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 HUTHINSON の写真1 写真2
 参考:スタンフォード大 Neuromuscular Biomechanics Lab

ネイチャージャパンバイオニュース 3.08.02
  発生:ティラノサウルスは走れなかった
  先週のネイチャー掲載論文のニュースです。日本語で読めます。