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全身羽毛に覆われたドロマエオサウルス科亜成体化石4.26.01
  The distribution of integumentary structures in a feathered dinosaur
  ネイチャー4月26日号掲載
   QIANG JI(季強)*, MARK A. NORELL†, KE-QIN GAO†, SHU-AN JI* & DONG REN*
  * Chinese Academy of Geological Sciences,(中国地質科学院)
  † American Museum of Natural History,
  中国遼寧省から産出したジュラ紀後期から白亜紀前期の非常に保存状態が
 よい、全身羽毛に覆われたドロマエオサウルス科恐竜化石についての研究で
 す。属・種は不確定とされています。
 真の羽毛をもつCaudipteryxカウディプテリクス以外に全身羽毛で覆われた恐
 竜の報告は初めてであることが重要なポイントです。Caudipteryxについては、
 二次的に飛行能力を失った鳥類であるとする研究もあります。

 遼寧省Lingyanから20km南西のFanzhangzi発掘現場( 人民日報日本語版によ
 れば凌源大王杖子地区)から産出した化石は全身で、鏡像になったスラブA、Bの
 2枚の岩板からなります。義県層になりますが、年代は確定されていません。
 130km離れた四合屯では放射性同位体の測定から1億2千460万年前及び1億
 4千700万年前、2つの結果が出ています。しかし、この現場から測定試料はない
 ので、報道でもこの2つの年代間としています。

 化石の様子は、頭部を右側に向けて大の字に寝ているといったところです。ただ
 し、前肢は折り畳んでいます。左後肢の脇にはLycoptera リコプテラ という小魚
 の化石があります。体長は1mあまりと思われます。

 特に、手首に大きい半月状の手根骨があることから、マニラプトル類内の恐竜と
 されます。歯はSinornithosaurus シノルニトサウルスと同様ですが、中足骨の長
 さなど異なる点もあります。アメリカ自然史博物館のページではシノルニトサウルス
 か近い種の幼体という書き方をしています。

 頭骨は略し、歯骨歯は典型的なドロマエオサウルス類のものですが、Microraptor
 のようにくびれず、セレーションは後側にしかありません。
 尾椎の前方2/3では個々の椎骨が明確になっていません。これが保存上の問題
 なのか、棒状になっていたのかは識別しがたいそうです。また、他のドロマエオサ
 ウルス類のように、尾椎骨の前関節突起と血道弓の後突起がそれぞれ伸びていま
 す。

 だいぶとばして・・・
 羽毛について、この標本NGMC91では、頭から尾まで、後肢を除く全身が羽毛で覆
 われています。その長さも部位によって異なるのですが、羽毛の種類も3種類が認
 められます。単純な繊維状のもの、ダウンのように一つの根からいくつにも分かれる
 もの、羽軸から羽枝がわかれる、鳥類の正羽と同様なもの。論文では、その前肢に
 羽軸とヘリンボーン(杉綾)模様が見られるとしています。これは隣り合った羽の羽枝
 が交差してなす模様とされています。

 鳥類との系統的位置とあいまって、この羽毛は鳥類の羽と相同であるとしています。
 これまでの遼寧省産の飛ばない羽毛恐竜の個々の研究から、羽毛の起源は鳥類の
 飛行の起源と関係のない重要な証拠が導かれるとしています。

 報道では、スミソニアン自然史博物館鳥類学キュレーターのStorrs Olsonは、羽毛状
 構造は他の化石に見られるような、鱗の腐敗していったものか、鉱物が羽毛状に形成
 されたものだと主張しています。また、最古の鳥類始祖鳥より年代がはるかに新しい
 ことも指摘しています。しかし、NORELLは、獣脚類の祖先は2億3千500万年前に遡り
 年代は十分始祖鳥より古いと反ぱくしています。
   ヤフーニュース(毎日) BBCニュース AMNHプレスリリース AMNHリサーチ
  ヤフーニュース(AP) ABCニュース MSNBCニュース ニューサイエンティスト
  ナショナルジオグラフィックニュース 人民日報 新華社 ほにゃ訳

サイエンスフライデイで羽毛恐竜についてインタビュー4.28.01
 ゲストにマーク・ノレルを迎えています。ラジオ放送です。
 実際に聞いてみる方はNPRオンラインのアーカイブで。リアルプレイヤー
 で聞くことができます。

マーク・ノレルからのコメント4.28.01
  DinosaurMLに羽毛ドロマエオサウルス論文執筆者の一人、マーク・
 ノレルからコメントが寄せられています。
 この恐竜は命名されていないのですが、それはHuaxisaurus ではな
 いかという疑問について否定しています。Huaxisaurus 自体は体長
 170cm以上だそうです。
 西遼寧の年代については、論文から引用して答えています。
 ネイチャーで公表前にAMNHのリサーチサイトがリークしたことについて
 また、鎌のような中指の爪と報道された点は解像度の低いファックスを
 中国瀋陽のホテルで受けて誤読したための自分の誤りであるとしてい
 ます。彼は21日に中国から帰国したそうで、熱河の獣脚類(まだ知られ
 ていない)の研究をしていたそうです。これは、もしかして昨11月25日に
 お知らせした、内蒙古自治区で発見された恐竜のことかな?

羽毛ドロマエオサウルスの大画像4.28.01
  The Dinosaur Inteplanetary Gazzet では、ネイチャー発表の羽毛
 ドロマエオサウルスの大画像を掲載しています。アメリカ自然史博物
 館のものより大きいので、より骨格や羽毛の様子を鮮明に見ることが
 できます。画像はまだ増やされる予定だそうです。
羽毛ドロマエオサウルスのイラスト4.30.01
  Todd Marshall 描く羽毛ドロマエオサウルス。近頃の羽毛恐竜は、こ
 のポーズがはやりなのかな?

Luis Rey 描く羽毛ドロマエオサウルス5.2.01
  Todd Marshall のイラストと比較していかがでしょう?それぞれ描く側
 の個性が表れているように感じます。

明日のネイチャーで羽毛恐竜研究発表4.25.01
  アメリカ自然史博物館と中国の季強らの研究です。ドロマエオサウルス類
 らしく、かつてアーケオラプトルが言われたような恐竜とトリの間をつなぐ存在
 のような気がします。
 同博物館のサイトでは一時写真が出ていましたが、現地時間午後2時まで
 再び閉鎖されてしまいました。ネイチャーでの発表を待てということでしょう。
 DinosaurML AMNHリサーチ