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2足歩行する主竜類の走行性8.22.00
  ネイチャー8月17日号掲載 406, 716 - 718 
 Cursoriality in bipedal archosaurs
 TERRY D. JONES, JAMES O. FARLOW, JOHN A. RUBEN,
 DONALD M. HENDERSON, WILLEM J. HILLENIUS

 表題からするとすごく広い範囲を扱っているように見えますが、獣脚類恐竜、と
 りわけカウディプテリクスと鳥類の走行性の比較分析から結論に達しています。
 
 獣脚類恐竜の重心は骨盤の股関節近くにあって、走行は大腿骨から後肢全体
 を回転させることによっています。
 一方、鳥類は尾は縮小し、飛行時のバランスのために重心は翼付近まで前方
 に移動しています。しかしこのため走行時に獣脚類恐竜と同じような後肢全体
 の回転はできません。
 ダチョウやエミューのように走行に適応した鳥類は、大腿の遠位端を重心のある
 翼近くの前方にもってきて、大股走行は主として膝から下で行っています。
 
 研究者たちは、この両者の走行の違いが、両者の走行に有効な後肢部の長さ
 と密接に関連していることを明らかにしました。有効長は、鳥類は脛足根骨+中
 足骨。恐竜は大腿骨+脛骨+中足骨としてあります。すると、走行に適応した鳥
 類の方が獣脚類および鳥脚類恐竜より相対的に1.5倍ほど長いのです。
 平たく言えば、膝から下だけ使って脚全体と同じように走るには、膝から下が長
 くなければチョコチョコ走りになってしまいますよね。

 さて、この結果をもってカウディプテリクスの相対長を見ると、走行に適応した鳥
 類と全く同じであり、他の恐竜とかけ離れていました。これはカウディプテリクス
 が走行鳥類と同様であったことを示唆します。さらにこのことからカウディプテリク
 スの寛骨臼(大腿骨が骨盤にはまる穴)から重心までの距離が、デイノニクスのそ
 れより約2.3倍前方に位置することが導き出されました。重心が前方に位置する
 ことは、カウディプテリクスの尾の短さと一致しています。

 これらから、研究者たちはカウディプテリクスの分類上の位置について3つの仮
 説を出して検討しています。
 (1)カウディプテリクスは恐竜の走行の仕方を捨てて鳥類の走行をした特異な恐
  竜だった
 (2)カウディプテリクスは飛行した祖先から分かれた恐竜 
 (3)二次的に飛行能力を失った、始祖鳥の子孫である鳥類であり、恐竜ではない。

 (1)については、系統分類的にはカウディプテリクスはコエルロサウルス類の恐竜
 であることが支持されるが、この分析ではカウディプテリクスの特異な走行という
 形質について十分に検討されてきていない。(2)についてはどの獣脚類恐竜につ
 いてもこのような祖先の実在の証拠ははい。で、(3)がさらに緻密な調査に価する
 としています。

 カウディプテリクスは恐竜なのか、二次的に飛行能力を失った鳥類なのか、さら
 なる研究が期待されますね。