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「手取層群から新たな肉食恐竜の発見」7.30.99白峰村教育委員会
   手の指先(末節骨)から、世界最古のオビラプトル類であることが判明

  白峰村内の手取層群桑島層から肉食恐竜の指先(末節骨)の新標本が発見され、手取川
 流域の珪化木産地調査団の7月26日までの研究により、肉食恐竜のオビラプトロサウルス
 類(オビラプトル科、カエナグストゥス科、テリジノサウルス科)であることが明らかになった。

 これは、1998年夏の調査で採集した岩石の中から発見された、手の指先の末節骨1点で、
 長さ約23ミリ、厚さ約3ミリの小さな骨。全体が緩やかにカーブし、先端が鋭くとがっている。
 上下の幅が等しいことから手の指、断面が8の時形なことから進化した肉食恐竜(テタヌラ類)
 であることがわかる。根本から上方に角状の突起があるのが最大の特徴である。よって末節
 骨1点だがオビラプトロサウルス類であると同定することができた。

 この突起は、爪を上方に持ち上げるための筋肉が発達する面だったと想像される。形はモンゴ
 ルの白亜紀後期から発見されているオビラプトルの第三指によく似ており、オビラプトロサウル
 ス類の中でもオビラプトル類に属すると考えられる。

 白亜紀前期の地層からは初めてのオビラプトロサウルス類であるので、新種である可能性が
 高いが、末節骨だけで新種を提唱することは難しいので、さらなる追加標本を待たなければな
 らない。

 全長70センチ程度の小さな個体であると推定されるが、これが子どもなのか小さな種の大人な
 のかは定かではない。しかし、白亜紀中頃の北米産のミクロベナトールは同程度の大きさのオ
 ビラプトロサウルス類であったことから、白峰標本が小さな種の成体である可能性も十分に考え
 られる。末節骨の形態から、オビラプトロサウルス類は、爪を上下に大きく、力強く動かすことが
 出来たと考えられる。


  オビラプトル類は、従来の化石記録ではアジアと北アメリカの白亜紀中頃から後期にかけて
 生息したグループで、最大の種でも全長2.5メートル、体重30キロ程度の小型肉食恐竜で、歯が
 退化する代わりに、頑丈なくちばしを持っていたことで知られる。従って白峰の標本は、世界最
 古の記録となる。これまで一番古いオビラプトル類は、アメリカ・モンタナ州の約1億1000万年前
 の地層から発見されたミクロベナトールだったので、このグループの起源が約3000万年遡ったこ
 とになる。

 このグループは、ヴェロキラプトル類などと併せてマニラプトル類と総称され、肉食恐竜の中でも
 特に鳥類に近いとされる系統である。鳥の肉食恐竜起源説は鳥の祖先にあたる系統の肉食恐
 竜が、最古の鳥である始祖鳥よりも新しい時代からしか出ていないことが、問題とする学者もい
 るが、今回の発見により、鳥に近い肉食恐竜と始祖鳥の「時代差」が大幅に短縮されたことにな
 る。

 また、オビラプトルは卵を抱いた化石が数年前にモンゴルで発見され、卵を抱く習慣は恐竜から
 鳥に受け継がれたという説が提唱され、また近年は体表に鱗ではなく、羽毛があったことが推
 定されるなど、肉食恐竜の中でも特に注目されるグループである。


  手取層群桑島層からオビラプトル類が発見されたことは、手取層群における肉食恐竜の多様
 性が高かったことを示すのはもとより、同じく鳥に近いヴェロキラプトル類が生息していたことから
 初期の鳥類進化に関わりの深い場所であったといえる。ジュラ紀から白亜紀への時代の移り変
 わりの中で、アジア、とりわけ日本を含む海岸部が独自で活発な進化の場であったことを示すも
 のである。
 図版1左手第2又は3指の末節骨 図版2マニラプトル類等の系統(セレノ1999)
 参考:ヤフーニュースライン
     毎日フォトジャーナル
     毎日新聞
     読売新聞
 
石川県白峰村で肉食恐竜指先発見7.30.99
  オヴィラプトロサウルス類の左前肢指先末節骨の化石だそうです。
 寸法は長さ23ミリ最大幅3ミリ、推定体長は約70から90cm。
 手取層群の桑島層と呼ばれる白亜紀初期の地層(約1億4千万年
 前)からで、世界最古級とのこと。
 ヤフーニュースライン
 毎日フォトジャーナル
 毎日新聞
 読売新聞