"トリの翼は走るスピードを増すためだった"説5.6.99
  ネイチャー5月6日号に掲載。米ロスアンゼルス郡立自然史博物館の
 ルイス・キアッペとサンディエゴ自然史博物館の航空力学の専門家、
 Phillip Burgerの研究です。
  飛翔の起源については、大別して樹上から飛び降りることからという
 説と地上を走ることからとする説が対立しています。キアッペらの研究は、
 (地上を走った肉食恐竜からトリが進化した)地上説の補強と言えます。

  カラスほどの大きさの始祖鳥が地上から飛び立つには最低、時速15マ
 イル(秒速6m)にならなければならないと見積もられています。
 一方、始祖鳥の脚の解剖学的構造からは、その半分以下の早さ(秒速2m)
 でしか走れなかったと見積もられます。このことは、始祖鳥が現代のトリと
 同じように樹上から飛び立ったことを示唆します。
  もし、始祖鳥が樹上から飛び立ったのなら、現在トリの祖先とする説が
 主張されている、地上を走る肉食恐竜は、いったん樹木に登るようになっ
 たのでしょうか?

  キアッペらの研究によると、地上を走る際に羽ばたくことによって前方へ
 の急加速を生じるということです。これにより始祖鳥は10から15ヤードの
 距離(9.1から13.7m)で3秒以内に離陸に要する時速15マイル以上、時速
 18マイル(秒速7.8m)に達することができた。今までの研究は、脚による加
 速しか考えてこなかったと、彼らは主張しています。

  これに対する反論も、もちろん出ています。
  樹上説の立場からスミソニアン協会のStorrs Olsonは、飛翔の起源は
 枝から枝に飛び移る際に、最初はパラシュートのように、次には滑空する
 ように、最終的に飛ぶようになったもので、コウモリ、トビトカゲ、絶滅した
 翼竜は皆このやりかたです。地上を走って飛ぶようになったものなどいな
 いと、彼は述べています。

  ノース・カロライナ大のフェデューシャ(Alan Feduccia)-彼はトリの祖先は
 恐竜ではないと主張しています-も別な視点から反対しています。現代の
 トリのように、曲がった爪や反対側を向いた足指をした、始祖鳥の足の構
 造は、樹上生活をしていた事を示す。地上を走っていたトリではないと言っ
 ています。

  カンザス大ローレンス校のラリー・マーティンは、もし、羽ばたきで地上を走
 る速さが増すのなら、トリはそうするだろう。しかし、自分の知る限り、そうして
 いるトリはない。と、述べています。私は農場で育ったが、ニワトリを追いかける
 と、奴らは落ちるときにはバランスをとるために翼を広げたが、走る時にスピード
 を上げるために羽ばたいたりしなかった。と、言います。
  これにはキアッペは、ニワトリに接近してから追い立てれば羽ばたいて、より
 速く逃げると反論しています。

  ケンブリッジ大の Paul Barrettのは、この研究は議論するには興味深いが、
 まだ、どのように始祖鳥が空中に飛び出すのに翼をつかったのか問題が残ると
 述べています。
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 参考:ロスアンゼルス郡自然史博物館
    Flyin' Dinosaurs(Sientific American誌'98年3月)
    Archaeopteryx: Taking Flight(アメリカ自然史博物館)