新しいシンクロトロンで、先史のゴーストを解明 12.19.12
  マンチェスター大 Dinosaur CSI
  シンクロトロンといっても、従来のCTスキャンとどう違うの?と、疑問が出ると思います。スタンフォー
 ド大の高速蛍光シンクロトロン装置では、僅かなリンの痕跡も浮かび上がらせることができるそうで
 す。
 ニュースでは、500万年前のトカゲの全身皮膚化石を試料に用いた結果が出ています。これまで皮
 だけと思われていましたが、スキャンにより歯列の化学的痕跡が判明しました。歯列配置により、初
 めてこのトカゲの種類を同定することができたそうです。
 N.P. Edwards, R.A. Wogelius, U. Bergmann, P. Larson, W.I. Sellers, P.L. Manning. 2012.
 Mapping Prehistoric Ghosts in the Synchrotron.
 Applied Physics A, DOI 10.1007/s00339-012-7484-3 論文

世界最古、1億1千万年前の擬態昆虫 12.14.12
  ナショナルジオグラフィック(日)
  クサカゲロウの幼虫は、その背中に植物片や捕食した昆虫の破片を付け、擬態することが知られて
 いるそうです。この起源はいつからか不明ですが、スペインで1億1千万年前のコハクの中の幼虫で、
 背にシダ片をつけているものが発見されたそうです。
 Ricardo Perez-de la Fuente, Xavier Delclos, Enrique Penalver, Mariela Speranza, Jacek Wierzchos,
 Carmen Ascaso, and Michael S. Engel
 Early evolution and ecology of camouflage in insects
 PNAS 2012 ; published ahead of print December 12, 2012, doi:10.1073/pnas.1213775110
 アブストラクト

エディアカラ生物は、陸上生物だった 12.13.12
  オレゴン大 ネイチャーニュース
  エディアカラ生物といえば、カンブリア爆発以前の平和な海に生息していた、こんなイメージを、持っ
 ていました。しかし、オレゴン大のGregory J. Retallack の研究によると、オーストラリアのエディアカラ
 生物を産出する地層は、陸上の土壌だったそうです。すると、エディアカラ生物は、地衣類のようなも
 のだったのでしょうか?この研究は、大いに論争を引き起こすかもしれませんね。
 Gregory J. Retallack(2012)
 Ediacaran life on land
 ネイチャー電子版 doi:10.1038/nature11777 アブストラクト
 

日本最古のベレムナイト記載 10.29.12
  北海道大学
  Sichuanobelus utatsuensis
  ベレムナイトの出現時期は、これまで考えられてきたより3300万年遡ることが明らかになりました。
 Yasuhiro Iba, Shin-ichi Sano, Jorg Mutterlose, and Yasuo Kondo (2012)
 Belemnites originated in the Triassic?A new look at an old group
 Geology, v. 40, p. 911-914, doi:10.1130/G33402.1 アブストラクト 論文

化石骨内のDNAの半減期は521年 10.12.12
  Murdoch大 ロシアの声
  映画ジュラシック・パークに出てきたような、恐竜のDNA再生は無理なようです。
 オーストラリア、Murdoch 大の研究者らが、600〜8,000年前のモアの肢骨158標本を用いて、
 骨内のDNAの分解状態を調べたところ、その半減期は521年であることがわかりました。それで
 も研究室内でシミュレーション実験した分解率より400倍遅いそうです。このレートが正確であれ
 ば、凍結した化石骨ではDNA断片が約100万年保存されるそうですが、恐竜の時代までは遡れ
 そうにありません。 残念!
 Morten E. Allentoft, Matthew Collins, David Harker, James Haile, Charlotte L. Oskam,
 Marie L. Hale, Paula F. Campos, Jose A. Samaniego, M. Thomas P. Gilbert, Eske Willerslev,
 Guojie Zhang, R. Paul Scofield, Richard N. Holdaway and Michael Bunce (2012)
 The half-life of DNA in bone: measuring decay kinetics in 158 dated fossils
 Proceedings of the Royal Society B doi: 10.1098/rspb.2012.1745
 アブストラクト

カンブリア紀前期の節足動物の複雑な脳および視葉 10.11.12
  ネイチャーニュース 英自然史博物館 アリゾナ大
  中国雲南省の澄虹(チェンジャン)動物群は、バージェスと並びカンブリア爆発期の標本を多数
 産出することで知られています。今回の論文では、Fuxianhuia protensa という節足動物の標本
 に、脳及び視葉が極めて良好に保存されていることから、神経系の進化および主要な節足動物
 群どうしの進化的類縁関係を論じています。
 この脳は複雑で、これまで考えられていたより脳の進化が早期に起こったことがわかりました。
 視覚は現生の昆虫類などと同等の能力をもっていたそうです。
 Xiaoya Ma, Xianguang Hou, Gregory D. Edgecombe & Nicholas J. Strausfeld (2012)
 Complex brain and optic lobes in an early Cambrian arthropod
 Nature 490 pp.258-261(11 October 2012) doi:10.1038/nature11495
 アブストラクト
 参考:雲南省古生物研究重点実験室(雲南大学)

3億9千万年前のヒザラガイを3D復元 9.21.12
  ナショナルジオグラフィック(日)
  CTスキャンと3Dプリンターにより、3億9千万年前のヒザラガイが3D復元されています。
  テキサス大オースティン校ニュース 同大学の高精細写真
  ナショナルジオグラフィック(英)動画あり ユーチューブ(CTスキャンの復元画像)
  JAKOB VINTHER, PETER JELL, GEORGE KAMPOURIS, RYAN CARNEY, RACHEL
  A. RACICOT and DEREK E. G. BRIGGS(2012)
  The origin of multiplacophorans - convergent evolution in Aculiferan molluscs
  Palaeontology Volume 55, Issue 5 pp.1007?1019 DOI: 10.1111/j.1475-4983.2012.01180.x
  アブストラクト

最古のコハク中の節足動物 8.28.12
  アメリカ自然史博物館 ライブサイエンス
  北イタリアから発見された2億3千万年前のコハクの中から、2種の節足動物が記載されて
 います。節足動物の進化を探る上で重要なものです。
 Alexander R. Schmidt, Saskia Jancke, Evert E. Lindquist, Eugenio Ragazzi, Guido Roghi,
  Paul C. Nascimbene, Kerstin Schmidt, Torsten Wappler, and David A. Grimaldif,
 Arthropods in amber from the Triassic Period
 PNAS ちなみに、最古の昆虫は、8月2日付けのネイチャーで、3億7千万年前(デボン期後期)、
 ベルギーから産出した標本が記載されています。
 Romain Garrouste, Gael Clement, Patricia Nel, Michael S. Engel, Philippe Grandcolas, Cyrille
 D’Haese, Linda Lagebro, Julien Denayer, Pierre Gueriau, Patrick Lafaite, Sebastien Olive,
 Cyrille Prestianni & Andre Nel
 A complete insect from the Late Devonian period
 Nature 488,82-85(02 August 2012)doi:10.1038/nature11281 アブストラクト

北海道浦幌町で日本最新のアンモナイトか 8.12.12
  十勝毎日新聞
  浦幌町立博物館、足寄動物化石博物館、三笠市立博物館が浦幌町茂川流布の「K/T境界層」
 露出地点の近くで行った共同調査で、ディプロモセラス科とみられるアンモナイトの化石が発見
 されました。

ロシア南部、正体不明の生き物の化石 4.10.12
  ロシアの声
  ロシア南部のフュントヴ川で、約2000万年前の正体不明の生き物の尻尾の一部が見つかったそうです。

骨格をもつ最古の動物 4.08.12

小さくても鋭すぎる、コノドントの歯 3.25.12
  モナシュ大 ブリストル大
  コノドントの歯は、あまりにも小さく、どのような動きをしていたかなど研究する障害になっていました。
 今回の論文では、日本からの粒子加速器を用いたX線によりCTスキャンと同様の使い方をして、3Dモ
 デルを作り、その働きを調べたものです。
 その結果、コノドントの歯はこれまでに測定された中で最も鋭い口中構造物であることがわかりました。
 この鋭さが、小ささからくる限界を打ち破ったとしています。また、イヌやネコなど食肉類と同様な、ノッチ
 のついた歯になっているので、肉などのタフな食物も処理することができたとしています。
 David Jones, Alistair R. Evans, Karen K. W. Siu, Emily J. Rayfield and Philip C. J. Donoghue(2012)
 The sharpest tools in the box? Quantitative analysis of conodont element functional morphology
 Proc. R. Soc. B Published online before print March 14, 2012, doi: 10.1098/rspb.2012.0147
 アブストラクト

中期ジュラ紀のノミ記載 3.24.12
  中国師範大学(このページの一番下に論文へのリンクあり。ダウンロードできます)
  2月29日、ネイチャー電子版に掲載された、中期ジュラ紀の最古のノミ、これと非常によく似た標本
 が、Current Biology誌で記載されました。5月1日付でオレゴン大ニュースに掲載。
 Current Biologyでは、
 Pseudopulicidae(中国名:似蚤科) 新科
 Pseudopulex jurassicus (中国名:儒羅似蚤)、P.magnus (中国名:巨大似蚤)
 ネイチャーの論文では記載した標本をノミ類のステムグループTarwinia としています、一方Current
 Biologyでは、ネイチャーで記載した標本についてTarwinia とは多くの形質を共有しているが、口器
 情報が欠落しているため、暫定的にPseudopulicidaeから除外しておくとしています。
 Current Biology 模式標本の産地はネイチャーと同じく内蒙古自治区寧城道虎溝の1億6500万年前
 のJiulongshan(九竜山)層ですが、所蔵は中国師範大学です(ネイチャーの標本は南京地質古生物
 研究所所蔵)
 Tai-ping Gao(高太平), Chung-kun Shih, Xing Xu, Shuo Wang & Dong Ren (2012)
 Mid-Mesozoic Flea-like Ectoparasites of Feathered or Haired Vertebrates.
 Current Biology (advance online publication) doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2012.03.012,

進化:恐竜もノミに悩まされていた? 3.08.12
  1日にお知らせした、最古のノミの論文は、今日のネイチャーに掲載されています。
 ネイチャーアジアのハイライトでその要約を見ることができます。登録をしていないと読めないような
 ので、その場合はグーグル経由だと読める場合もあります。

恐竜にたかった?ジュラ紀、最古の巨大ノミ記載 3.01.12
  47ニュース ネイチャーニュース 毎日新聞 朝日新聞 AFPBB 中国科学院 南京地質古生物研究所
  中国内蒙古自治区のジュラ紀の地層や遼寧省の前期白亜紀の地層から産出したもので、体長2cm
 近くあります。内蒙古は寧城、道虎溝の中部ジュラ系Jiulongshan(九竜山)層、遼寧省は北票市、黄
 半吉溝(Huangbanjigou)、下部白亜系Yixian(義県)層からです。
  Diying Huang, Michael S. Engel, Chenyang Cai, Hao Wu & Andre Nel(2012)
 Diverse transitional giant fleas from the Mesozoic era of China
 Nature(2012)doi:10.1038/nature10839 アブストラクト
 Nature 483,201?204(08 March 2012)doi:10.1038/nature10839

絶滅四肢動物の前肢姿勢の指標としての、肘関節内転モーメントアーム 2.23.12
  四肢動物の運動を復元するために必要な姿勢の復元は、骨からだけしようとすると、あいまい
 な部分が多くなり、難しく議論を要することになっています。
 この論文では、肘関節の内転/外転角度と手根屈筋が内転にはたす役割を調べて、前肢姿勢
 の復元を試みています。
 318の絶滅動物の肘関節モーメントアームを測定し、その結果、四肢を伸ばして直立したり、ナマ
 ケモノのような這う姿勢の動物は、それぞれ肘内転筋肉、伸筋、屈筋を強調させていることが明
 らかになり、また登攀性・非登攀性の分類群はそれぞれ伸筋、屈筋を強調させていることが明ら
 かになりました。したがって、この方法を用いることにより絶滅動物の前肢姿勢が定性的・定量的
 に分類することができる。トリケラトプス、翼竜アンハングエラ、哺乳類デスモスティルス類は、直
 立矢状移動分類群に分類される、としています。
 Shin-ichi Fujiwara(藤原慎一) and John R. Hutchinson (2012)
 Elbow joint adductor moment arm as an indicator of forelimb posture in extinct
 quadrupedal tetrapods.
 Proceedings of the Royal Society B (advance online publication)
 doi: 10.1098/rspb.2012.0190 アブストラクト

琥珀の中から新種の吸血バエ化石を発見 2.14.12
  ナショナルジオグラフィック(日) 毎日新聞
  数日前に紹介したはずなのですが、パンテオンの記事が消えてしまったようです。
 とりあえず、報道を紹介。

南ア、ナミビアから世界最古の動物化石 2.07.12
  AFPBB
  ナミビアのエトーシャ国立公園などの7億6千万年〜5億5千万年前の岩石から海綿状の動物
 化石が発見され、Otavia antiqua と記載されました。これは、動物の出現がこれまでより1億〜
 1億5千万年早かったことを示しています。
 C. K. ‘Bob’ Brain, Anthony R. Prave, Karl-Heinz Hoffmann, Anthony E. Fallick, Andre Botha,
 Donald A. Herd, Craig Sturrock, Iain Young, Daniel J. Condon, Stuart G. Allison(2012)
 The first animals: ca. 760-million-year-old sponge-like fossils from Namibia
 South African Journal of Science Vol 108, No 1/2 (2012)
 アブストラクト 論文フリーです

中期ジュラ紀、1億6千500万年前のキリギリスの音色を復元 2.07.12
  朝日新聞 ブリストル大ニュース カンザス大ニュース
  中・英などの研究者が、1億6千5百万年前のキリギリスの仲間Archaboilus musicus の音色
 の復元に成功しました。復元された音色の高さは6.4khで、虫としては低め。チッチッと小刻みに
 鳴いています。
 ジュラ紀の森でもメスを呼ぶために、オスは羽をふるわせていたのでしょう。
 Jun-Jie Gua,Fernando Montealegre-Z,Daniel Robert, Michael S. Engela, Ge-Xia Qiaod,
 and Dong Rena (2012)
 Wing stridulation in a Jurassic katydid (Insecta, Orthoptera) produced
 low-pitched musical calls to attract females.
 PNAS Published online before print February 6, 2012, doi: 10.1073/pnas.1118372109
 アブストラクト 音色復元動画(MOV)

バージェス頁岩からチューリップ形の新顔 1.21.12
  トロント大ニュース 同イメージ
  バージェスの新しい怪物、それは体長約20cm。柄にチューリップのつぼみが付いたような
 形をしています。Siphusauctum gregarium と命名されました。濾過食をしていたそうです。
  O'Brien LJ, Caron J-B (2012)
 A New Stalked Filter-Feeder from the Middle Cambrian Burgess Shale,
 British Columbia, Canada.
 PLoS ONE 7(1): e29233. doi:10.1371/journal.pone.0029233 論文